愛する娘のために10%の親権獲得に向けて奔走する男の切なくも滑稽なブラックコメディ
「離婚しない男」(1) 2023/2/20発売 |
本作は,ドラマも映画も,そして漫画も時代を反映するな~とつくづく感じた作品の一つです。
憧れの王子様と出逢い,ガラスの靴のお陰で再会し,みごとゴールイン,めでたし,めでたし。
で終わるラブストーリーが王道なのは普遍ではありますが,時代は移り,それからも人生は続くとばかりに,夫婦関係,義父母との関係,子育て,ご近所付き合い,離婚劇……リアルな結婚後の生活を描くドラマもバリエーション豊かになりました。
とはいえ,離婚に際して,弱者は妻の側というのがまだまだ主流。
夫や姑からの精神的・身体的DVに苦しみ,離婚を考えるも経済的自立ができない不安子供の親権を得られないのではないかと奔走するヒロイン……かと思いきや,本作は妻の浮気を知り,娘の幸せのために,離婚後の親権を獲得するために奔走する男のお話です。
民法上,未成年の子がいる夫婦は,父母のどちらかを親権者と決めない限り,離婚は認められません。
親権で争った場合,9割が母親に親権が認められるのが現状で,法律家の端くれの筆者もそれを当然の理として受け止めておりました。
しかし,本作は,社会部エースとして活躍する男が1割の父親の親権獲得のために奔走する物語です。
妻の浮気を知り,娘に対する言動からも,娘の幸せのためには自分が親権を持つべきと,強い信念を抱くものの,離婚すると親権は,ほぼほぼ母親に認められてしまう。
親権を獲得するために在宅ワークを選びイクメンに変身すべく苦手な家事育児に四苦八苦,恋女房への愛情が残る中で浮気現場の動画を泣きながら撮影し,相談する弁護士にはことごとく「離婚はOK,でも親権獲得は無理」を突きつけられる。
ああ,漫画もここまで進化(?)したかと,感慨深い1作。
とかく,法律の規定や裁判所の解釈が女性に不利になる側面ばかりにフューチャーされがちですが(それはそれで大切なことですが),逆の理不尽に憤る,いまやマイノリティーとなった男性目線のブラックコメディ。
登場人物のキャラは立ちすぎるほど強烈ではありますが,随所に表現される細やかな心情の揺れや葛藤も物悲しくも滑稽で,次を読みたくなる面白さに溢れています。
現在,コミックDAYS他で連載中の本作。#4までお試しができます。
ちょっと意外な社会の一面をのぞいてみてはいかがでしょうか。
【作品#1~#4話無料公開URL】
https://comic-days.com/episode/316112896827815684
コミックDAYS ウェブサイト
https://comic-days.com
推薦者 Kobayashi miyako |
教育&映画・演劇プロデューサー 漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画・舞台制作にも関わる。 |
「離婚しない男」(1) 2023/2/20発売