「星の瞳のシルエット」柊あおい

星の瞳のシルエット

「星の瞳のシルエット」(1)
柊あおい/リボンマスコットコミックス

今回おすすめする『星の瞳のシルエット』のキャッチフレーズは「200万乙女のバイブル」。
200万人の少女たちがこの漫画を読んでいたということです。
連載が進むにつれ「りぼん」読者は増え、途中で「250万乙女のバイブル」に変わります。
その、250万分の1の私……。
幼い頃からボーイッシュ(男勝り?)で女の子らしさを隠して生きていた私も、
バイブルとして信仰(というほどハマっていました)していました。

幼い頃にすすき野原で「星のかけら」をくれた男のコのことを忘れられない、
中学二年生の香澄ちゃんが主人公。
友人の真理子ちゃんに好きな人ができたと聞くのですが、
その想い人、久住くんに香澄ちゃんもどんどん惹かれてしまいます。
久住くんも、香澄ちゃんが気になっているようす。

実は「星のかけら」をくれたのは久住くんだったのです。キャー、運命の人!
なのに、久住くんは親友の真理子ちゃんが好きな人だから、ということで
香澄ちゃんは逃げ腰。でも、久住くんが好きな気持ちは止められない!
という、グラグラな気持ちで過ごすうち、沙樹ちゃんや司くんといった
それぞれの友人も巻き込みつつ、泥沼の三角関係に陥ります。

香澄ちゃんと久住くんが両想いなのは誰の目から見ても明らかなのに、
まぁ、この二人がぜんぜんくっつかないのですよ。
いくら真理子ちゃんに「協力してね」と牽制されていたからといっても……。
久住くんが告白しても断るんです、香澄ちゃんったら!

なぜか真理子ちゃんと久住くんが付き合うことになったりもして、
ようやく二人がお互いの気持ちに素直になるのは、なんと高校二年生の春!

やきもきしてこの三角関係を読んでいただけに、
付き合うことになって良かったという気持ちももちろんありましたが、
反面、このなかなか進展しないふたりの関係が無性に羨ましくなった当時の私。
「こんな恋がしてみたい」と思ってしまうのです……。バイブルですからね、なにせ。

そんなとき、私の友人M子が「好きな人ができた」とか言っちゃうわけです。
タイミング良すぎ、いや、悪すぎです。
そう……私もM子の好きな人、H君を好きになっちゃいました。

もちろん最初は「好きになったという設定」です、ヒドい女ですね。
「でも、彼はあのコの想い人……」とか悲劇のヒロインぶって浸ってみたりして。
そのくせ、M子のためにと言い訳しながら、自分も彼とどんどん仲良くなっていき、
漫画のごとくそれぞれの友人を巻き込み、グループで遊びに行ったりしました。

H君はとても良いヤツで、本気で好きだなーと思ったりもしましたが、
結局、皆バラバラの高校に進学したことで、グループ交際的なものも自然消滅しました。

けっこう早い段階で、M子は私の気持ちに気づいたと思います。
「友だち想いで健気な私」を気取っているのも分かっていたと思います。
最後の方は呆れていたんだろうな……中学卒業まではなんとか付き合ってくれていましたが、
高校に入ってからはすっかり疎遠になってしまいました。

もっと早く香澄ちゃんと久住くんがくっついてくれていたらな……。
漫画内でも現実でも傷つく人は少なかったんじゃないかな、と、
参考にするポイントを完全に間違えた私が言うのも何ですね。

改めていま読むと、中学時代の恥ずかしい記憶が蘇りかなり身悶えますが、
香澄ちゃんと久住くんが「なんでなの?」ってくらいくっつかないことを
我が身に置き換えながら、やきもきしながら読むのがこの漫画の楽しみ方。

「今回こそ二人が……?」とドキドキして読んでいた、本当に大好きな漫画でした。
乙女のバイブル、あなたはどう読みますか?

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターの たかしまてつを アシスタント、DTPデザイナーなどもしながら、趣味で愛猫ナロの姿を撮り続ける自称〈ナログラファー〉。最近増えた猫家族えんにもメロメロ。著書に、ブログ「あすナロにっき」をまとめたフォトエッセイ集『あすナロにっき』『あすナロびより』、幻冬舎の文芸誌「GINGER L。」で連載した猫エッセイ『tサンとナロ』。