「ストレンジ」 |
書店で見つけた時,表紙デザインとイラストの素晴らしさに魅かれてジャケ買い(表紙買い?でも,本でもジャケ買いって言うみたいですね)した一作です。
コミック一巻で完結。
6組の「Boy meets boy」を描いた短編集です。
とはいえ,BLではなく(ゲイも登場しますが,恋愛には発展しません)。
6つに共通しているのは,日常では避けがちな「異質なもの」との出逢いと,それによって起きる確実な変化と歓喜です。
熱中できるものを全く持てない高校生が,女装バーにつとめるガタイの良いゲイの熊田と出逢う表題作の『STRANGE』。
オデコちゃんと呼ばれる高校生の彼は,人生の少し先輩である熊田の生き様を見て人生の扉を開く勇気と希望を持つようになります。
他方,屈託なさそうに見えて実はゲイであることに少し後ろ暗さを抱えている熊田ですが,何の偏見も持たず素直に友達として接してくるオデコちゃんによって活きる力を感じ取ります。
鈍臭くていつもおどおどした態度の本庄を毛嫌いしていた涼二が,本庄の人となりに触れて彼の魅力とスゴさに魅かれていく『CONNECT』。
男手ひとつで育てた娘の結婚にショックを受け生きる希望を失った男が,出張先の南国で超絶明るいガイドの青年と出逢うことで世界は美しさに溢れていることに気付く『BRIGHT』。
人付き合いが苦手で真面目な高校生が,教師から問題視され同級生からも距離を置かれている強面の同級生と本を通じて仲良くなり,自分の弱さとずるさに気付いていく『FRIEND』。 生徒と深く関わることを避けてきた高校教師が,実は愛犬家というヤンキー生徒と「動物好き」という秘密を共有する『PRETTY』。
母子家庭に育ち,仕事優先で構ってもらえないせいで大人不振になってしまった少年が,アニメオタクの伯父との共同生活で心が少しずつほどけて行く『MOVE』。
6組12人の出逢いと変化の始まりが,繊細なペンタッチによる美しい画とテンポのいいストーリー展開で鮮やかに描かれています。
どの物語もその後の展開が気になるところで,まさに「寸止め」って感じです。
と思いきや,『AFTER』および特典書き下ろし(『STRANGE』の更なる『AFTER』です)でその後の彼らを少し覗かせてくれるというニクイ構成です。
ただ,彼らのその後がどうなったかを自分なりに想像されてから,『AFTER』を読まれることをオススメします(筆者はそれを知らずにがんがん読み進んで後悔しました),と言うことも最後に付け加えておきます。
推薦者 Kobayashi miyako |
教育&映画プロデューサー 漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画制作にも関わる。 |