〜ハリウッドも真っ青!スーパーヒロインが魅せる全く新しい痛快西部劇アクション登場!〜
「BLACK TIGER ブラックティガー」(1) |
南北戦争(1861年〜1865年)当時のアメリカを舞台にした2大映画と言えば『若草物語』と『風と共に去りぬ』。
北軍兵士であるお父さんの留守宅を守るお母さんや四人姉妹,南部の大地でたくましく生きるスカーレット・オハラ,いずれも強い女性が活躍します。
まぁ,男が戦場に駆り出される以上,女は強くならざるを得ないのかもしれませんが。
打って変って,南北戦争後のアメリカが舞台になると,ハリウッドが築き上げた独自の映画ジャンル“西部劇”。
砂煙舞う荒野で,名うてのガンマンが愛馬を操り,艱難辛苦の末にお尋ね者はじめとする悪党を倒し,弱きには優しい男気溢れる勧善懲悪のヒーローが大活躍!……
ですが,俄然主人公は男,男,男です。
本作の主人公が登場するのは,南北戦争後のアメリカですが,主人公は美しく聡明で強い・強い“女性”です。
彼女はBLACK TIGER(ブラック・ティガー:タイガーではありません。念のため)と名乗る賞金稼ぎ,しかも,そんじょそこらの賞金稼ぎではなく,賞金額10倍を約束され,“殺しの許可証”を与えられた合衆国政府公認(!)の賞金稼ぎなのです。
愛馬マックスを相棒に,闇医者のウエキを従えて,ティガーは合衆国政府から依頼される様々な事件を解決します。
もちろん,あくまでも合衆国政府は彼女にとってのお得意さんにすぎないので,身の安全は自分で守らなければなりません。
抜群の美貌とスタイル,並外れた筋力と反射神経で馬と二丁銃を操り,陸上戦だけでなく海戦術にも長け,銃に限らず武器全般や,機関車を始め最新技術にも詳しい。もちろん,時には撃たれ,瀕死の重症を負うこともありますが,そこは驚異の回復力で復活。
19世紀アメリカ西部のゴルゴ13かはたまたジェームスボンドか。ディガーが手にする賞金は,日本円にして,数千万から時には数億円。
かといって贅沢とは無縁の生活ぶりで,野宿することもしばしば。
細菌兵器の開発と人体実験,奴隷制廃止の網を潜って行われる闇人身売買,忽然と消えた輸送列車ミステリー,秘密裏に開発された新型兵器によるパリ大殺戮計画……と,ティガーが立ち向かう事件は,西部劇アクションとは思えないスケールの大きさ。
そして,時代はアメリカ先住民と白人の確執,馬車から鉄道へと輸送手段の変化,科学技術の発展に伴う,武器の発達と戦術の変化など当時の歴史のうねりも背景に構成されたダイナミックな展開。
更に,舞台は,アメリカ西部に止まらず,メキシコ湾上,工業技術花開くパリ,なんと幕末の日本へと……お〜い,どこまで行くんかいぃ〜!
2016年に『こち亀』(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)が終了した時は一大ニュースにもなったほどの騒ぎで,秋本治先生の新連載を切望していたファンは限りなくいらしたことでしょう。
そんなファンの方々の期待をいい意味で大きく裏切る本作『BLACK TIGAR』,コミカルな要素はもちろんのこと,劇画アクション,超かっこいいヒロイン,銃オタクな記述etc.どれを取っても新たな秋本治ワールド全開です。
あと,19世紀〜の激動の欧米史,日本史のお勉強にもなります。
筆者も思わず,『まんが世界の歴史8』読んじゃいました(笑)。
(2019年7月15日現在、不定期連載。2巻まで発売中)
推薦者 Kobayashi miyako |
教育&映画プロデューサー 漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画制作にも関わる。 |