「魔法使いの娘」「魔法使いの娘ニ非ズ」那州雪絵

〜またしてもあまり怖くないのですが、幽霊も妖怪も出ますよー!〜

魔法使いの娘icon

「魔法使いの娘」(1) 全8巻
那州雪絵/新書館(ウィングスコミックス)

魔法使いの娘ニ非ズicon

「魔法使いの娘ニ非ズ」(1) 全7巻
那州雪絵/新書館(ウィングスコミックス)

タイトルが2つありますが、続編ですので同じシリーズとしてご紹介します。

読む前は、とんがり帽子の黒いマントの……というファンタジー系を想像していたのですが、

意外にも「魔法使い」のお父さんのお仕事は「陰陽師」でした。

主人公はその娘の鈴の木初音(すずのき はつね)ちゃん、最初は普通の高校生として登場します。

舞台もたまに昔話になったりしますが、基本的には現代の日本のお話です。

なぜ陰陽師なのに娘に「魔法使い」と呼ばれてしまうのか。

それはお父さんの陰陽師としての力があまりに強大で向かうところ敵なしで

魔法みたいだから、というのが理由の1つですが、もっと他にも意味がある気がします。

お父さん、といっても初音ちゃんの本当の両親は幼い頃に亡くなっており、

養父である鈴の木無山(むざん)さんは、陰陽師としてとても優秀です。

人には言えないような危ない依頼を受けたり、

妖怪など人外の者からの依頼もあります。危険な仕事でなかなか稼いでいるので、

初音ちゃんにも余裕のある暮らしをさせてあげられています。

しかし、この人、生活力がまったくない!

いわゆる家事という家事、自分の身の回りのことも含めて何1つできない、

というか興味がないようです。

幼い頃から陰陽師としての修行だけをしてきたせいもあるのか、

「(陰陽師の中では)一番人から遠い」と評されてしまうほど、

世間知らずで幼い感覚の人なのです。

4歳の時から、無山さんと暮らしている初音ちゃんは、家事の一切を引き受け

高校を卒業しても家事見習いというか専業主婦のようなことをしています。

実は無山さんが初音ちゃんを引き取ったのは、ゆくゆくは自分の後継者にと思ったから。

とはいえ、特に修行などもさせられてこなかった初音ちゃんには全くその気はありません。

でも、素質は多分にあるようで、いつの間にかお父さんのお仕事のお手伝いをしていたり、

気づけばその道に進んで行ってしまいます。

話が進むにつれて、陰陽師って大変な仕事じゃない?となってくる初音ちゃん。

そりゃなります、お父さんは最強の陰陽師なのですから、立ち向かう敵も強いですし。

それなのに、お父さんの弟子や兄弟弟子など、その手の関係者がどんどん増え、

両親の死の真相が明らかになったり、初音ちゃんの悩みは尽きません。

それでもへこたれず前向きに立ち向かう、むしろパワフルすぎるくらいの

初音ちゃんの生き方が読んでいてとても気持ちが良いです。

『魔法使いの娘』では「魔法使いの娘」として生きていた初音ちゃんが、

『魔法使いの娘ニ非ズ』では「娘ニ非ズ」となり、生きていく道はなかなか厳しくなります。

それでも、彼女は少しずつ増えた周囲の味方に助けられ、

パワーを失うことなく突き進んで行くんだろうなと思わせてくれ、

そんな初音ちゃんの強さに読んでいると救われる思いがします。

陰陽師の話なので、もちろん怨霊や呪いや、妖怪的なものまで色々出てきますが

あまり「怖い!」って話はないかもしれません。ちょっとゾッとするくらい?

怖いお話が苦手な方にもオススメできる不思議な漫画です。

あと、クダギツネの「テンテン」が可愛いので、ぜひ見てみてください!

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもやってます。幻冬舎プラスで連載していた、お店をオープンするまでの連載が電子書籍『お店、はじめました。~40歳未経験のカフェオープン~』になりました。