「3 -THREE-」惣領冬実

「3 -THREE-」(1)＜全14巻（単行本）、全8巻（講談社版）＞ 惣領冬実/小学館（フラワーコミックス）

今回は音楽にまつわる漫画を紹介するということで、以前SFマンガ『ES -Eternal Sabbath-』をご紹介した、惣領冬実さんの少女漫画作品です。

音楽漫画といっても『のだめカンタービレ』のように読んでいると音楽が聞こえてくるようなタイプではありません。

音楽業界の話、という方が近いかもしれません。

歌手として生きていくには、そして得意なことややりたいことで生きていくには、というのが大きなテーマであると感じます。

主人公は歌手になりたくて事務所にも入りレッスンを受け順調にその道を進んでいこうとしている中学生の岸森理乃ちゃん。

ルックス、歌唱力には恵まれているけれど、もう一つ3つ目の要素、存在感、つまりオーラのようなものが足りないと思われています。

そんな時に知り合ったのが同級生の中野目圭くん。

外国人の実父を持つケイには、理乃ちゃんが羨むほどの美貌と音楽の才能がありバンドでギターを弾いています。

互いに惹かれ合うふたりですが、ケイが手を負傷してすごい上手いギターが普通に上手いギターになってしまったり、ヴォーカルの道を選ぶケイの才能に理乃ちゃんが嫉妬したり、次々と試練を突きつけられる14とか15歳のこどもたち。

さらにケイの家庭環境の複雑さもプラスされ、なかなか少女漫画の恋愛モードになりにくいふたり。

とはいえ、少女漫画は恋愛がメインです、とばかりにやたらと三角関係が出てきます。

タイトルの「3」は、仲間がいることの相乗効果で「1+1=3」になる、

だからバンド最高だよね！という意味だったり、男女でもお互い高めあっていける関係って良いよね、という意味だったりするのかなと思っていましたが、三角関係の3でもあるのかなーと読み直して思いました。

理乃もケイもそれぞれ別のバンドでデビューをして、どちらも人気が出ますが、ふたりの距離は離れるばかり。

同じ道を志す者同士が付き合うのって本当に大変なことですよね。

お互いの才能に嫉妬したり、自分の「好き」が相手の才能にしか向けられていないのではないかと悩んだり、自分に歌がなかったら愛されていないのではと疑ったり……それらをひっくるめても好きなものは好きなのが愛なのでしょうね。

物語は中学生から始まり高校へは行かずにデビュー、いろいろあって、20代なかばくらいまでのふたりが描かれています。

濃すぎる10代を送ったふたりがどんな生き方をチョイスしたのか、ぜひ読んで確かめてみてください。