「ES -Eternal Sabbath-」惣領冬実

es表紙

「ES」(1)
惣領冬実/講談社(モーニング)

今回のおすすめは惣領冬実さん、読んだ作品によって印象が変わる作家さんです。

別冊少女コミックでデビューして、『ピンクなきみにブルーなぼく』や

『ボーイフレンド』などを読んだ方にとっては少女漫画家さんですよね。

2001年に青年誌の『モーニング』に移ってからの『チェーザレ 破壊の創造者』を

読んだ方には歴史漫画家の印象でしょうか。

週間少女コミックで連載していた『3-THREE-』から読んでいる私にとっては、

少女漫画だけど地に足のついた恋愛を描く、絵がとっても上手な漫画家さん、です。

『3-THREE-』も音楽マンガですが、いろいろな「生き方」を考えさせてくれる名作です。

ちょっと少女漫画にしては硬派な漫画を描くなと思っていたら青年誌に移られて、

最初に発表したのが今回のおすすめ漫画、『ES -Eternal Sabbath-』です。

不老不死の研究で生み出された不死身の遺伝子ESが組み込まれたシュロとイザク。

彼らは他人の心に入り込み、その記憶を改竄できる力も得ていて……!? という、近未来SFです。

もうビックリするくらい人が死んで、他人の心に入り込む時はグロテスクな描写もありますし、

これは少女漫画では描けなかっただろうし、青年誌に移られて良かったなと感激した記憶があります。

秋庭亮介(あきばりょうすけ)と呼ばれることを選んだシュロと、

偶然彼と知り合った医大研究員・九條未祢(くじょうみね)のふたりが主人公。

未祢さんには亮介くんの力が効かないので、彼の正体に気づくのですが、

周りの人間はあっという間に亮介くんの意のままに動かされてしまいます。

力を使い人類を滅ぼそうとしているイザクを止めることになったふたり。

シュロとイザクを生み出した研究所にいた榊と協力して、生きるか死ぬかの

闘いをしているのですが、もともと研究ひとすじで恋愛がよく分からない未祢さんと、

する気もない亮介くんが、アレやコレやと事件に巻き込まれるうちに恋心が芽生え……

と、「そんな場合か!」と怒られそうですが、それもふたりには必要なことなのです。

青年誌ということで、キャラクターの美しさは少し抑えめにしているようですが、

線のキレイさは相変わらずで、絵が美しい!

そして、ちゃんと恋愛もあるのが少女漫画からのファンとしても嬉しいところ。

「愛されること」と「愛すこと」を知った者と知らない者。

それは、不死身のES細胞を持つ彼らだけではない、普通の人間にもあてはまります。

人間って何なのでしょう?と、次々と突きつけられる問題に、未祢さんは考えます。

未祢さんと一緒に私たちも考えされます。

終わり方がとっても「続く」っぽかったのですが、続編は出ていません。

でも、いろいろ想像して楽しんでいられるので私は満足しています。

あっさりシュロやイザクに操られてしまいそうですが、もし自分だったら……?

と考えながら読むのが悩ましくも楽しいSF漫画、おすすめです。

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもしながら、趣味で愛猫ナロの姿を撮り続ける自称〈ナログラファー〉。最近増えた猫家族えんにもメロメロ。著書に、ブログ「あすナロにっき」をまとめたフォトエッセイ集『あすナロにっき』『あすナロびより』、幻冬舎の文芸誌「GINGER L。」で連載した猫エッセイ『tサンとナロ』。