〜カノジョの顔は分からなくても、大好きです!〜
「のぼさんとカノジョ?」(1) |
ヒトは顔じゃない、ハートだ! と、いわれます。
そうかも、と思いつつ、性格は顔に出る、ということもありますし、
美醜だけではなく細やかな表情にグッとくることもあります。
ただ、まったく相手の顔が分からなくても恋に落ちるか?と問われれば、
無理でしょうねと、この漫画を読むまでの私は答えたと思います。
今はインターネットがあるから、顔を合わせなくても大丈夫かな、と思いつつも、
実際に会って話す情報量に勝るものはないと思っている古い人間なので。
さて、今回の主人公は大学3年生の野保康久くん、「のぼさん」です。
のぼさんは一人暮らしのアパートでカノジョと暮らしているのですが、
その顔や歳、体格はおろか名前すらもわからないのです。
なぜなら、「カノジョ」はユーレイだから!
さらに記憶を無くしているから、カノジョ自身も何もわかっていません。
ユーレイとの同居話を描いた漫画は少なくありません。
でも、たいてい少なくとも読者はその姿を見ることができます。
主人公にしか見えない、というパターンが多いでしょうか。
誰にも見えない、というのが、この漫画の斬新なところです。
けっこう書き込みも多いし、コマ割りも細かくて、
かなり情報量が多い漫画ですが、「カノジョの顔」だけは
読者の想像力に委ねているというところが面白いと思いました。
自分の名前も思い出せないユーレイのことを、
のぼさんが便宜上「カノジョ」と呼んだことで、
周囲がどんどん「彼女(恋人としての)」と誤解していくのも、
言葉遊びのようで、字を追うだけじゃなくて声に出して読んでみると、
「あー、たしかにそう取れるよなぁ」と納得していました。
天然すぎるのぼさんが、妙にモテる設定なのが、ちょっとなぁと思いつつも、
読んでいくうちに、とにかく真っ直ぐなのぼさんを応援したくなってきます。
カノジョも初めから家に女の子を入れるな、とか
なかなかシット深くて(まだ「彼女」じゃないのにね)。
ちょっと面倒な子なのかなと思ってしまっていましたが、
のぼさんとの会話(筆談)を見ているウチに、可愛く思えてきます。
擬音やのぼさんの推測で、だいぶ補完されてはいますが…。
のぼさんとカノジョが、お互い誤解したり、それを解決したり、
周りの応援があったり、ジャマが入ったり。
そんな風にドタバタしながら、二人の恋は実るのか?とか、
そもそもどうなったら恋が実るわけ?とか、ワクワクしながら
読んでいくと、あっという間の全8巻でした。
顔が見えなくても、ちゃんと向き合って接していれば
恋に落ちることもあるよね。今の私はそう言います。
推薦者 Nakamura aya |
ギャラリーカフェオーナー 大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもしながら、趣味で愛猫ナロの姿を撮り続ける自称〈ナログラファー〉。最近増えた猫家族えんにもメロメロ。著書に、ブログ「あすナロにっき」をまとめたフォトエッセイ集『あすナロにっき』『あすナロびより』、幻冬舎の文芸誌「GINGER L。」で連載した猫エッセイ『tサンとナロ』。 |