「麦の惑星」鳥野しの

〜秋になるとパンが食べたくなるんです!〜

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「麦の惑星」(1)<全3巻>
鳥野しの/祥伝社(フィールコミックス)

寒くなって暖かいシチューなどが美味しい季節になると美味しいパンが食べたくなります。
もちろんパンはいつでも美味しいのですが、食欲の秋との相乗効果があるのか秋から冬にかけて食べるパンの美味しいことといったら……!

のっけから好きな食べ物の話になってしまいましたが、どうも体質的にお米よりパンを食べると肥える、という統計(私個人のものです)があり普段はパンをできるだけ控えているのですが、この時期はいけませんね。
温かい飲み物や食べ物に添えるパンの美味しさといったら、他の季節の比ではありませんね。

というわけで、パン屋さんの漫画です。
こちらの16話に出てくるシチューパン、あれ本当に食べたいんですよ。
パンをくりぬいて中にシチューが入っているなんて夢の食べ物ですね。
あんなものを発明した地球人は本当にすごいと宇宙人も思っていることでしょう。

はい、ただのパン屋さんのお話ではありません。この漫画には宇宙人が登場します。
パン屋さんを営んでいる「紺太」と地球にきた宇宙人の「まみ太」が兄弟、擬似家族として暮らすという、ほのぼのした絵柄からは想像できない設定の漫画です。

地球にいる宇宙人といえば侵略か不時着あたりが王道パターンですが、まみ太は不時着タイプです。とある山に不時着した宇宙船から食料を求めてふもとの町へ出てきて紺太のパン屋さん、「ほたるベーカリー」にたどり着きます。
なんやかんやあって、母星からまみ太の救助が来るまでという期間限定で兄弟として一緒に暮らすことになるわけです。

地球の食べ物は口に合わないと言っていたまみ太ですがパンは食べられることがわかりました。もぐもぐとパンを頬張るまみ太が可愛いです。
そして美味しいものを食べると頭のツノ(?)がぴょんと立ってしまうまみ太が、紺太が作ったパンを食べるとツノが立っちゃうので、頭を押さえながら食べるのがまた可愛いくてしかたありません。

高度な文明の星から来たらしいまみ太は生まれた時から一人暮らしをしているので、おじいさんが亡くなってから跡を継ぎ、ひとりでほたるベーカリーを営んでいる紺太の言う「さみしい」という感情がわかりません。

紺太やお店に来るお客さん、町の人たちやまみ太が通うことになった小学校の同級生や先生など周囲の人たちと交流する中で「さみしい」って「お腹が空いた」と似てる?
くらいまで理解するまみ太。しかし母星からの救助の時は意外と早くて……!

最初はパンの漫画だ!と思って反射的に飛びついた漫画だったのですが、舞台となっている山が遊びに行ったことのある山を元にしていたり、紺太と暮らす猫の「小さじ丸」が、我が家の猫たちと同じキジ白模様だったり、あと細かいところですが紺太とまみ太が家ではんてんを着ていたり、個人的に作者さんと好きなものが近いかもと共感点が多くて嬉しかったのもこの漫画の好きなポイントです。

もう少し宇宙人であるまみ太から見る地球を見てみたかったですが、星に帰ってしまったまみ太がどうなってしまうのか……ぜひ読んてみてくださいね。
なによりパンが本当に美味しそうに描かれているのも見どころです!

パンが食べたくなる漫画、危険……いえ、オススメです。

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもやってます。幻冬舎プラスで連載していた、お店をオープンするまでの連載が電子書籍『お店、はじめました。~40歳未経験のカフェオープン~』になりました。