「はじめアルゴリズム」三原和人

数学の世界を旅する漫画。

はじめアルゴリズムicon

「はじめアルゴリズム」(1)<全10巻>
三原和人/講談社

文明以前から人類は
「数える」という行為を
行ってきた

獲物の数
家族の数
天空の星の数
太陽のめぐった数
人々は「数えた」

やがて獲物の数
「2」と
太陽のめぐった数
「2」が
同じであということに
誰かが気づく

人数に
パターンがあることを
発見した

(「はじめアルゴリズム」2巻より)

数字がなかった時代。
そんな時代があったことなんて信じられませんよね。
私たちが今ごく当たり前に使っている数字や足し算引き算、三角形の面積の求め方、集合という考え方などなど。
これらは、過去に色んな人が不思議に思い、考え、謎を解明して、名前をつけたものなのですね。
そして、今も世界中の人が数の謎を解明しようと考え続けている…

私は、小学校のとき時間や速さの問題で四苦八苦したという、まじで数学できない人間です。
だからなのか、数学に強い憧れがありまして、生まれ変わったら理数系の人になりたいと真剣に願ってます。
「素数が好き」とか言ってみたい!

今まで数々の数学関係の本を読もうと思ってきました。
優しい数学、初めての数学、サルでもわかる数学……
全部かなり最初の段階で挫折して、結局どれ一つ最後まで読めませんでした。

しかし、この漫画はちょっと違いました。
すべての数学本を挫折してきたこの私が完読したのです!

この漫画の主人公”はじめ”少年は数学の天才小学生。
島育ちのはじめのまわりには学校の算数以外で数学というものに触れる機会はなく、彼独特の方法で数学の世界を切り開いていきます。
それは、想像力と発想力、そして見るものすべてになぜ?と問いかける強い好奇心です。
不思議に思い、考え、謎を解明していく…過去に数々の数学者たちがやってきたことを、一人でやっていたのですね。

そんな天才少年のもとに、ある日数学者であるウチダが現れます。
ウチダはかつて天才数学者と呼ばれていた男ですが、歳を取り、悩みを抱えて生きています。
でも数学に対する熱い思いは消えていない。
はじめを見つけたときのウチダの高揚はそれは大きなものでした。
そして、自分がこの天才少年を育てる!と心に誓うのです。

はじめ少年はウチダから、まわりの大人から、友達から、ライバルから、本格的な「数学」という学問を学びます。
それだけではなく、思春期の悩みや人が生きること、死について、数学以外のことも学んでいき、日々成長していきます。
新しい扉を次々と開いていくのです。

そして、師となるウチダもまた、はじめと関わることで新しい扉を開いていく…

1巻の最初に「数学は若者の学問だ」とあります。
数学の難問解決には数年とかかり、追い続ける粘りが必要で、年齢によるの肉体の衰えは精神の粘りの衰えにつながり、

事実 数学史上
50歳を超えての大発見の例は
ほとんど
ない
(「はじめアルゴリズム」1巻より)

のだそうです。

50を超えた、へたしたら60も超えてるかもしれないウチダが開く扉は、数学という扉じゃないかもしれない。
でも、開かれたときのキラキラと光指す眩しさやワクワクする気持ちは、形が違うだけで数学のひらめきと同じなんじゃないかな、と思うのです。
それを成長と呼ぶのであれば、ウチダもまた成長してるんじゃないでしょうか。

そうなんです、これは数学だけのお話ではないんです。

この漫画を読んで数学に目覚める人がいるかも知れない。
新しい何かを始めようとする人がいるかも知れない。
そんな、前向きな気持にさせてくれる漫画なのです。

少しでも数学に興味がある人に読んでみてほしい漫画です。

もちろん、数学好きにもおすすめします!

ちなみに、監修をしている三澤大太郎氏の数学的解説が巻末に載っているのですが、
私はだいたい途中で挫折してます(^_^;)

やっぱ理数系は来世におあずけかな。

推薦者 今井美保

⇒作品とプロフィールページ