汚くて,危険で,不便で,意地悪で……でも大好になる不思議な街パリ。男子漫画家目線のパリ滞在記!
「パリ愛してるぜ~」 「かかってこいパリ」 「パリが呼んでいる」 <全3巻> じゃんぽーる西/飛鳥新社 |
時は2005年。
フランスの漫画(B.D.(ベデ):バンデシネ)に憧れ,ワーホリでパリにやってきた漫画青年。
もちろん,徹底した貧乏旅行。
しかもフランス語は皆無で,ブロークンな英語を頼りに現地の日本人コミュニティの中で仕事も生活も全て調達してゆく。
ユースホテルに泊まりつつ,アパルトマンを探し,日本食品店でのバイトを見つけ,漫画修行にとアシスタントの仕事を探すも,フランスの漫画家はひとりで作品を仕上げ,「アシスタント」という概念はないことに打ちひしがれる。
結局,漫画家らしい生活からは遠のき,ごくごく普通のワーホリ滞在者同様の生活を続けること1年。
フランス人のビズ(頬を寄せ合う挨拶)でうまくチュッという音を出せずに困惑しつつも,かわいいマドモアゼルとのビズに愉悦。
パリの寿司屋の醤油には砂糖が入っていて,フランス人が「砂糖入り醤油」をこぞって買いに来るのに憤慨。
パリでは女性がキレやすいことに恐怖。
日本人と圧倒的にことなるフランス人の恋愛観を具に分析。
フランス人も悩む,マドモワゼルかマダムか何方で読んでも呼んでも怒られることに困惑。
パリの漫画家,同人誌事情,そしてパリにもいるオタクたちに共感を感じつつも,こだわりに対する毅然とした姿勢に感動。
その後,『パリ愛してるぜ〜』がフランス語翻訳され,フランス女子と結婚,フランス人妻との生活や日仏ハイブリットの子育て日記などの一連のエッセイ漫画を執筆,フランスに招待されるほどのフランス通漫画家として名を馳せる西氏。
『Sex and the city』よろしく(?)じょじょにセレブ感が出てきて,若干パンチは緩むものの,パリ三部作には,他の旅エッセイにはない庶民間・等身大の生活ぶりが描かれるユニークさは必見です。
おしゃれだけじゃないパリの現実に,パリ滞在経験のある方ならば誰しも「そうそう。そうなのよ!」「それでよかったんだ!」と叫びたくなる3巻。
コロナ禍以降,ワーホリも留学も観光も,ままならぬ時代となってしまいましたが,いつの日かこんな風に気軽にパリ滞在ができる日が戻ってくることを願いつつ。
2021年年末にて。
推薦者 Kobayashi miyako |
教育&映画プロデューサー 漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画制作にも関わる。 |