「マイ・ブロークン・マリコ」平庫ワカ

もういない人に会うためにーあたしは骨になった“ダチ”との最初で最後の旅に出た。

マイブロークンマリコicon

「マイ・ブロークン・マリコ」<全1巻>
平庫ワカ/KADOKAWA

ブラックな企業でこき使われつつも,マイペースにやさぐれながら生きているシイノトモヨ。

そんなシイノが唯一“ダチ”と呼ぶのは幼馴染でちょっとぶっ壊れた性格のイカガワマリコ。

リストカットしながらシイノに「彼氏ができたら死んでやる」と迫っていたくせに,DV 男と付き合っては別れるたびに甘えてくるマリコをうざいと思いながらも“ダチ”でいる。

そんなある日。

シイノが営業途中でラーメンを食べていると,テレビからマリコが転落死したニュースが流れてきたーー。

幼い頃から実父に性的暴行を受け,実母に捨てられ,恋人から暴力を振るわれ,人生を奪われ続けていたマリコ。

そんなマリコの窮状をそばで見ながら,結局は何もしてやれなかったシイノ。

“ダチ”の死を受け入れられないシイノは,マリコのために何かできることはないかと考える。

そんなシイノが出した答えはマリコの遺骨と彼女がシイノに描き続けた手紙を,マリコが行きたがっていた海へ連れて行くことだった。

直情径行で,思ったことをズバズバ言う気風の良いシイノだが,やることなすこと不器用でカッコ悪い。

マリコの遺骨の奪取も,海までの道のりもすんなり行かず,ズタボロになる。

最初で最後の 2 人旅。はたして,シイノはマリコに何かを与えることができるのかーー?

わずか 160 ページ弱の小品。

一言でいえば「自死した親友への想いを胸に遺骨と共に海へ旅する数日間の物語」と,ごくごくシンプルなプロットです。

でも,そこには,幼児虐待,虐待する側の複雑な心情(決して共感はできませんが),昨日までと同じようにそばにいると思っていた人が突然いなくなる喪失感と後悔そして贖罪,どんなに悲しいことがあっても繰り返される日常……ギュッと凝縮された信じられないほど多くの要素が読むものに迫ってきます。

『トーマの心臓』(萩尾望都作)のトーマは,最期にユーリへ“愛”を残しました。

本作でも,はたして壊れていたのはマリコなのか?

マリコは絶望の中で転落したのか?

与えるのはシイノなのか?

デビュー作にして,各マンガ賞を受賞し(文化庁メディア芸術マンガ部門新人賞他),全世界 10 カ国で翻訳出版されている本作。

圧巻のラストシーンは必読です。

推薦者
小林美也子

Kobayashi miyako

教育&映画・演劇プロデューサー

漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画・舞台制作にも関わる。