1947年独立。インドは自由だけなく,圧倒的な映画製作のエネルギーまで身につけた!
「RRR」 |
19歳でイギリス留学した後,弁護士として南アフリカで20年にわたり人権運動に携わったガンディーがインドに帰国したのが1915年。
ガンディーが「非暴力・不服従」を唱え、イギリスの支配に対して暴力では対抗しない、しかし、服従もしないという抵抗運動を指導していた頃の1920年、英国植民地時代のインドがこの物語の舞台です。
南インドの森林地帯にあるゴーンド族の村から英国軍に幼い少女マッリが拐われた。
マッリを救うためにゴーンド族のリーダー,ビームが立ち上がった。
英国総督はゴーンド族の襲撃を粛清しようと,リーダーの首を取ってきた者に昇進させると宣言する。
インド人警官のラーマは,ビームの捜査責任者に立候補する。
同じインド人でありながら,敵対する立場にあるビームとラーマ。
2人はひょんなことからデリーの街で出会い,お互いの素性をしらぬまま,運命的な友情を感じ,兄弟のように親しくなる。
やがてビームはマッリ奪還のために,公邸を襲撃するが,その行く手を阻止するのは警官の制服に身を包んだラーマだった!
ラーマが警察官として総督の命令に従うのには理由があった。
警察組織内で昇進し,武器管理を担当する地位についた後,大量の武器を民衆に渡すことで反英闘争を勝利に導く狙いがあったのだ。
ラーマにとって,ここでビームを捉えることは大昇進のビッグチャンス。
激しい死闘の末,ビームはラーマに逮捕されて公開処刑が決まり,処刑担当者にはラーマが任命される。
処刑当日,総督は鞭打つことでビームに膝まずかせようとするが,どんなに鞭打たれようとビームは絶対に膝をつこうとしない。
集まった民衆たちは,ビームの無言の抵抗に心動かされ,大きなうねりがおき始める。
そんなビームの生き様を目の当たりにして,インドの独立・反英闘争にとって,本当に大切なものは何なのかに気づかされるラーマ。
ラーマは総督を騙してビームを逃すことに成功するが,誤解したままのビームからは刺され,今度はラーマが総督に逮捕されてしまう。
ラーマが気づいたインド独立のために「大量の武器を持つ」ことよりも大切なこととは何か?
果たして,2人の青年はもう一度タッグを組み,反英闘争に打ち勝つことができるのか?
実は,2人の主人公にはモデルとなった実在の人物がいます。
A.ラーマ・ラージュ【Alluri Sitarama Rju(1897ka1898-1924)】とコムラム・ビーム【Komaram Bheem(1900か1901-1940)】は,どちらもインド独立運動の英雄として今も人々の尊敬を集める歴史上の人物です。
もっとも,この2名は実際には出会っていません。
本作は,「もし2人が出会っていたら?」という発想から生まれたフィクションで,他にも,インド2大叙事詩の登場人物にイメージを重ねたキャラクターがいます。
インド独立運動という史実,実在の人物をモチーフにしながらも,CG,アクション,ダンスに歌(インド映画のお約束)をふんだんに盛り込んで描かれた大ファンタジーです。
日本だと,織田信長が歴史上の実在の人物でありながらも虚実交えながら描かれるみたいな感じでしょうか。
「インド映画といえば,唐~突に歌って踊るもんなぁ」と呟かれた,そこのあなた。
インドの映画レベルは,もはやそんな程度で止まってはいません。
歌も踊りも必然性・レベル・歌詞,どれをとっても,かつてのハリウッド映画(MGMのミュージカル)を凌駕するほどのクオリティ,大群衆に包囲された警察官(ラーマ)1人VS数十万人の攻防戦,陸橋を爆走する列車の爆発事故で炎の中からの少年救出劇,大英帝国総督公邸に野生動物の群れを放つ襲撃大作戦,ガタイのいい友人を肩車した疾走する銃撃戦……
ストーリー展開,構成の巧みさと想像を絶する数々のアイディア,キャラクターの描き方の緻密さ。
今や世界中の映画ファンの心をワシ掴みにするエンターテイメント大作を創り出すのがインド映画界です。
「バーブフリ」2部作の監督だけあって(?),本作も3時間弱の超長編ですが,もう,もう,CGも振り付けも,セットも衣絢爛豪華で,荒唐無稽なくせに説得力があって,グイグイ惹きこまれるあっという間に過ぎます。
アクション映画にありがち(?)な,主人公がこれでもかとピンチに陥るシーンの繰り返しで時間の長さを感じるようなことも皆無なのは,脚本段階からの緻密な計算があってこそ。
髭面でガタイのいい兄ちゃん二人が暴れ,踊り,歌う映画です。
ど田舎から都会に出てきて,ひたすら少女を救うことだけを考えているビーム。
武器を民衆に手渡すことで,反英闘争に勝利する大志をいだいているラーマ。
とてもわかりやすいプロットの中に,男同士の友情と葛藤をぶち込んで,ラブロマンスをスパイスにして煮込んで,歌とダンスを付け合わせに。
すると,インド独立といった史実の中での市井の人々の苦悩,そしてガンディーの指導の意味したところまで教えてくれる。
円安加速,カルト教団,10数億円の盛大な葬儀……と,気の滅入るニュースばかが伝わってくる今日この頃。
わくわくドキドキ続きで全く飽きない3時間弱の後,スカッとできて,未来への希望と勇気がちょっぴり湧いてくる一作です!!
◆公式HP:rrr-movie.jp
◆公式Twitter:@RRR_twinmovie
監督・脚本:S.S.ラージャマウリ
原案:V.ヴィジャエーンドラ・ブラザード
音楽:M.M.キーラヴァーニ
出演: NTR Jr./ラーム・チャラン
原題:RRR/2021年/インド/テルグ語,英語ほか/シネスコ/5.1ch/
日本語字幕:藤井美佳/字
幕監修:山田桂子
応援:インド大使館
配給:ツイン #RRR
日本公開:2022年10月21日
上映時間:2時間59分
©2021DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED
予告動画:https://www.youtube.com/watch?v=TFX4y62OMAg
@株式会社ツイン