春夏秋冬,自然に囲まれ,守られる生きものたち。自然に抗い・戦うのは人間だけ……?
「とりぱん」(1)<既刊31巻> |
どこからともなく聞こえてくる鳥の鳴き声に,しばしば,これなんていう鳥だろ?
鳥の写真から名前を検索するアプリは見つけたものの,鳥の鳴き声から検索するアプリは発見できず。
姿を知るのは,僅かにカラス,鳩,すずめ(最近は見かけないな)のみ。
鳴き声付きの鳥類図鑑で勉強するか……と思う今日この頃。
東北在住の「とりぱん」作者・とりのなん子。
2004年の第17回MANGA OPENショート作品部門に応募した4コマ作品が審査員のかわぐちかいじ・さだやす圭に大絶賛され,大賞を受賞。
モーニング2005年21号から連載開始し,現在も連載中で,コミックスは2023年4月21日現在なんと既刊31巻の超ロングセラー!!
庭に飛来する野鳥を餌付けせんと,あくまでも野鳥たちが快適に過ごすことに腐心しつつ餌台やら餌の素地に工夫をこらす。
庭に限らず,畦道,田畑,森林……野鳥だけでなく,植物,猫,昆虫などいたるところに生息する「生きとし生けるもの」を具(つぶさ)に観察。
東北の鮮やかな四季の移ろいに応じた生きものたちの生活,作者周辺のエピソードが愛情深く,丁寧に・丁寧に描かれている。
スタイルは4コマ漫画で,登場する生きものたちはデフォルメ・擬人化して描かれ,ときおり「ゆるっ」,「くにゃっ」,「へにゃっ」と見るものを揺さぶる。
もちろん4コマ漫画のセオリーどおり,きっちり4コマ目にはオチがあり笑わせる。
他方で,デッサン力の確かさゆえ,大自然のシビアさもクールに描かれ,リアリティがある。 ときおりコマぶっちぎりで描かれる東北の桜,紅葉,そして雪景色の美しさの感動的なこと。
いわゆるペットとの生活を描く作品も,野生動物と闘う(?)作品も数多ある。
しかし,自然の中の「そこにある」生きものたちを,そっと陰から覗き見るような,とりのなん子氏の視点と観察力,そして画力と構成力は,唯一無二だ。
これを20年近くも週間雑誌で連載し続ける力は半端ない。
地球温暖化問題も,SDGsと地球規模で思考することも大切だ。
だけど,どんな場所にあっても,ほんの小さな生活圏にある自然を,かくも豊かに感じ取る感性も忘れずにいたい。
なんか疲れたな~。
てな時に,ランダムに手にとって読める作品です。
推薦者 Kobayashi miyako |
教育&映画・演劇プロデューサー 漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画・舞台制作にも関わる。 |