「シマシマ」山崎沙也夏

「シマシマ」(1)
山崎紗也夏/講談社(モーニングKC)

眠れない夜ってありますか? 実は私はあまりありません。

夏の夜、熱帯夜が寝苦しくて…ということならありますが、

たいていお布団に横になっると、3・2・1でぐっすり…はい、のび太くんのようですね。

なので、今回オススメする『シマシマ』の主人公シオさんのように、

いろいろあっても不眠に悩むことはほとんどない私ですが、

「添い寝屋」の「ストライプ・シープ」には興味津々です。

イケメンの草食男子が添い寝してくれるなんて、すごいですよね。

テンションが上がりすぎてむしろ眠れないかもしれません…(笑)

「モーニング」は男性漫画雑誌ですが、一時期ハマって毎週読んでいました。

山崎沙也夏さんの漫画に出会ったのは『はるか17(この時は山崎さやか名義)』からかな。

線が繊細な漫画で、出てくる女の子が可愛いので好きな作家さんです。

そういえば『シマシマ』の8巻に『はるか17』のはるかちゃんが出て来ます。

漫画を読んでいて他の作品とのクロスオーバーがあると嬉しい派です。

さて「添い寝屋」です。物語の終盤にその在り方を糾弾されたりしますが、

眠れない女性のために、20代の草食系イケメンが添い寝をしてくれるサービス。

利用者は事前にシオさんと面談してお互いに信頼できる人物かどうかを確認、

性的な行為は無し、と最初に説明しているので、安心して身を任せ……られますかね?

初対面の男性と一晩一緒に過ごして、本当にぐっすり眠れるのかな、とか、

漫画ではイケメンばかりだけど、現実はそうそうカッコイイ人は来ないよね、とか、

実現させるには難しいこともありそうです。

でも確かに人肌恋しい夜っていうのは必ずあるもので、

本当にこんなサービスがあったら頼みたいってヒトはけっこういるのかもしれません。

ストライプ・シープのメンバー4人の若者が自分の個性を活かしながら、

あの手この手で眠れぬ女性を寝かしつける「添い寝屋」の面白さが楽しめます。

そして、この漫画のもう一つの軸となるストーリーはシオさんの恋模様。

そもそもシオさん自身が不眠になったのは離婚した旦那さんへの未練から。

その未練を断ち切り、ストライプ・シープの男の子たちとの恋模様もあったりして、

けっきょくシオさんが選んだ彼氏というのが……?!

読んでいて思ったのは、草食男子もここぞという時にはグイグイいかないとダメだよ!

ってことです。シープ一番人気らしい人当たりが良く気配りが素晴らしいランちゃんも、

付き合うとなるとなんだかちょっと押しが弱いヒトになってしまうし。

やっぱり多少強引でもヒビキさん(シオさんの元旦那さん)が一番良い男なのでは……、

なんて思ったり。いや、でも浮気されちゃうからな……。

恋の駆け引き的なことをしている時の、シオさんの気持ちがぶれるところの描写が

すごい「分かる分かる!」って思います。そこは男性漫画にはない機微かもしれません。

抱きしめられた時に「このヒトじゃない」って思う感じとか、

理解ある余裕なフリをされて気持ちがサッと冷めてしまう感じとか。

とにかく、いろいろなタイプの男性が出てくるので、

添い寝してもらうなら誰かなーなんて妄想して読むと楽しい漫画です。

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもしながら、趣味で愛猫ナロの姿を撮り続ける自称〈ナログラファー〉。最近増えた猫家族えんにもメロメロ。著書に、ブログ「あすナロにっき」をまとめたフォトエッセイ集『あすナロにっき』『あすナロびより』、幻冬舎の文芸誌「GINGER L。」で連載した猫エッセイ『tサンとナロ』。