「AKIRA」大友克洋

〜普段はあまり興味ないのですが、このバイクは別格!〜

AKIRA_icon

「AKIRA」(1)
大友克洋/講談社(ヤングマガジン)

今回、この漫画を読み直したのは、先日観た映画に「金田のバイク」が出てきたからです。
金田のバイクとは、今回オススメする漫画『AKIRA』に登場して、
劇場アニメ版『AKIRA』の中での描かれ方がとてもカッコよかったため、
世界中で愛されているバイク、と私が思っているバイクのことです。

実際に作るのはかなり難しいらしく、完全に再現された動くモデルは無いのかな。
少なくとも今現在、個人が買えるものはないようですね。
登場した映画でも、VR(ヴァーチャル・リアリティ)世界の中で出てくるので
実際にはCGなのですが(あと細かい点が違うようですが……)
金田のバイクが実写に近い3Dで見られて、かなり嬉しかったです。

すみません、バイクバイク言っていますが『AKIRA』はバイク漫画ではありません。
バイクも不良少年も出てくるのですが、メインとなるテーマは、
「超能力、及びそれをコントロールすることについて」でしょうか。

それに軍とゲリラ組織とか、新興宗教団体とか、友情と恋愛とかもいろいろ詰め込まれて
サイバーパンクな世界に描かれています。世界観がしっかりしているし、
いつまでも古臭くならず、すべてが組み合っていて本当にカッコいい漫画です。

漫画版の『AKIRA』は第1巻の発売が1984年、劇場アニメ版は1988年公開の作品です。
電子版もなく、雑誌サイズ(B5判)の大きめな単行本全6巻にも関わらず、
2018年の現在も増刷されているのが、この作品の人気の凄さを物語っていると思います。

私が最初に見たのは劇場アニメ版。単行本も読んだ記憶があったのですが、
改めて読み直したら、どうも劇場アニメ版の印象の方が強かったようです。

舞台は2020年の東京オリンピックを控えた2019年です。
現実とまったく同じでビックリしますが、それまでの流れは全然違います。
漫画では、82年に東京で使用された新型爆弾をきっかけに、
第三次世界大戦が起こっています。
そこから復興してオリンピックを控えている「ネオ東京」が舞台です。

メインの主人公が「健康優良不良少年(自称)」の金田で、
金田のバイクがカッコよく描かれているのは劇場アニメ版の方。
漫画版では、金田の幼なじみで、軍による投薬で超能力が目覚めてしまう
鉄雄という少年の方が中心です。金田は主役のひとりではありますが、
途中巻で行方不明になったりしますし。

出てくる人物の背景がこと細かに描かれているのも、漫画版の魅力です。
今読むと、昔は金田たちの敵としてしか認識していなかった軍の大佐や、
宗教団体の教祖など大人たちの立場や事情も分かってきて、より物語を楽しめました。

劇場アニメ版は漫画連載がまだ終わっていなかったということもあり、
よく分からないラスト、と言われてしまう終わり方になっています。
漫画の方がより明確に少年たちの未来について描かれています。
劇場アニメ版は観たことがあるという方も、漫画版でじっくり読んでみてください。

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもしながら、趣味で愛猫ナロの姿を撮り続ける自称〈ナログラファー〉。最近増えた猫家族えんにもメロメロ。著書に、ブログ「あすナロにっき」をまとめたフォトエッセイ集『あすナロにっき』『あすナロびより』、幻冬舎の文芸誌「GINGER L。」で連載した猫エッセイ『tサンとナロ』。