「シングルマザーは再婚できない(女たちのリアル)」 宮島葉子

〜超リアルで深刻な人生の問題を扱いつつも,明るく元気づけられる極上エンターテイメント!〜

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「シングルマザーは再婚できない(女たちのリアル)」
宮島葉子/大洋図書

「え,なにこれ?めちゃくちゃリアルなんだけど!!!」

そんな興奮を覚えつつ読み進んでしまったのが本作『シングルマザーは再婚できない』です。

扇情的なタイトルからイメージされる,あの分厚めのレディコミによくある鬼嫁や鬼義父母もの(?)といったおどろおどろした内容(それはそれで極端さが面白くて筆者は好きですが(笑))を期待して読むと,いい意味で裏切られます。

DV夫と離婚し,育児に家事に仕事にと苦労してきたシングルマザー歴5年の依子(よりこ)にも,最近,年下の優しい彼氏ができた。

やっと自分にも幸せが戻ってきたかと思いきや,息子は彼になつかない。

土日には,入院し認知症が出始めた祖母の付添が降りかかってくるし,付添の間息子を預かってくれる実家に住む弟の嫁とは折り合いがつかず八方ふさがりの依子の前に,音信不通だった叔母(祖母の長女)が現れ,50年間の祖母と叔母の確執の深淵に触れることになり――表題作『シングルマザーは再婚できない』。

1話完結にも関わらず,夫が戦死して苦労した祖母の歴史から,叔母と祖母の母娘関係,主人公の依子と彼女の息子や,若い彼氏との関係と,盛りだくさんの人間関係とそれぞれの人生を,すっきりとまとめあげる構成力は圧巻です。

父と離婚してから女手一人で育ててくれた母の厳しさと冷たさに辟易し,距離を置いていた主人公。

他方,人の良い夫に無心に来る金使いの荒い義兄一家に不信感を抱き用心していたところ,嫌っていたはずの母が急死して手に入った3千万の遺産が一家の仲を険悪にしてゆく『遺産のドロ沼』。

子育ても家事も全くノータッチで,思いやりゼロの夫と別れる画策を進める専業主婦の心の動きをとらえた『離婚計画~みじめな夫が目に浮かぶ~』。

オタク夫に浮気夫,そして賭け事夫と,夫の身勝手さに心と体力をすり減らし,彼らとの生活をどこで見限るか間合いを測る妻たちの日常を描く『離婚寸前の妻たち』。

離婚した元妻が引き取った娘と10年ぶりに同居することになった父親の戸惑いと気づきを描いた『忘れられた娘』。

転職を繰り返す夫に,やきもきし,4歳の子どもを保育園に預けながら元の職場でアルバイトする由美は,人生いつもタイミング悪く,運をつかみ損ねてきたと悔やむ日々。

そんなある日ふとしたきっかけで,これまたタイミング悪く分かれた初めての彼氏と連絡が取れ,デートをすることに――『不倫願望~主婦35歳、初カレと会ってみる~』。

仕事,恋愛,結婚,家事,育児,嫁姑,介護,相続……女性が人生で直面する抱える問題をリアルにかつコンパクト,けれど濃密に描くことにかけてはピカイチの宮島葉子先生。
宮島先生の作品はどれも,シンプルで落ち着いた絵柄と一話完結のショートストーリーで,集中して漫画を読む時間をとれない読者層にとても優しい作風となっています。
本作品も,舞台設定やセリフの旨さで,登場人物のキャラクター,過去,思いがリアルに伝わってきます。

主人公の置かれた状況は何れも深刻で,全く好転してはいない(それどころか悪化している場合もあって,それが余計にリアルさを感じさせてくれる)のですが,どのストーリーも主人公がこれから先の人生を前向きに生きていく力強さを感じさせてくれます。
大人女子が思わず「ウンウン,あるある」と叫びたくなる感動作6本,男子にも是非読んでほしい秀作です。

推薦者
小林美也子

Kobayashi miyako

教育&映画プロデューサー

漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画制作にも関わる。