「スキップとローファー」高松美咲

〜新生活が始まる時のドキドキとワクワクと!〜

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「スキップとローファー」(1)<既刊5巻>
高松美咲/講談社(アフタヌーンKC)

知人のTweetで見かけて1巻を読んでみたらなんだか面白い!
と思ったらマンガ大賞2020年で3位になった作品でした。

石川県のはしっこから東京の女子高生になった、岩倉美津未(いわくらみつみ)ちゃんが主人公です。
神童で最高学府法学部を首席卒業、官僚になり定年後は地元に戻り市長に……という人生設計を持つみつみちゃん。
切れ長の瞳で黒髪のおかっぱで、「メガネ外したら美少女でした」などの少女漫画的補正もない普通の女子高生です。

確かに東京の進学校で首席入学し新入生挨拶を任された秀才ですが、電車の乗り換えができず、あっさり入学式に遅刻しそうになったりします。
どうやら自分が思っているよりは抜けているようで、周囲に人々に温かく見守られている愛すべきキャラです。

遅刻の危機を救ってくれた志摩聡介(しまそうすけ)くんと同じクラスになり、新入生挨拶の後嘔吐、という激しい高校デビューを飾ります。
イケメンなのに人懐こい聡介くんの優しさに助けられ、本人の素直さもあって、みつみちゃんは徐々にクラスに溶け込んでいきます。

私も小中学校がほぼ持ち上がりで9年間同級生が変わらず、同じ県内とはいえ高校で久しぶりにクラスで友だちを新しく作ることにとても緊張した思い出があります。
ましてやみつみちゃんは地方の同級生が8人しかいなかった中学校から都内の高校に通うことになったわけですから、それはそれは戸惑うことでしょうが、屈託なく誰とでも接するみつみちゃんの姿勢には学ぶところが多いです。

田舎から来たといって変に卑屈になるわけでもなく、イケメン(聡介くん)に話しかけられても臆することもなく、聡介くんを狙って牽制してくるクラス内外の女子もいなし……
というと、なんだかできる女っぽいのですが、けっしてそういう雰囲気でもなく。
嫌なことを言われたら落ち込むし、人間関係にアレもコレもと悩みますが、とにかくみつみちゃんは立ち直りが早い! そしてポジティブ!

特に印象的だったのは、クラスのちょっと可愛い女子とふたりで、バレーの練習をしていた時のこと。
上級生の男子生徒たちに嫌な態度を取られ、可愛い女子、江頭さんは怒ってその先輩の名前を覚えておこうとするのですが、みつみちゃんはその上級生を諌めてくれた男子生徒の名前を見ているのです。

良いことと悪いことを言われたら、良いことの方に耳を傾ける。
そんなポジティブさをみつみちゃんに改めて教わっている気がします。
全然タイプが違うのに美味しいものが共感できたら友だちになれるとか、きっかけなんて小さなことなんですよね、人間関係を良くするのって。

そして巻が進んでくると、アレの予感がしてきます。恋バナですよー!
みつみちゃんの恋バナ、めっちゃ気になります。
相手はやっぱり聡介くんなのー?!

とはいえ、私が一番気になっている恋の行方は、みつみちゃんと同じく聡介くんが気になっちゃっているクラスでちょっと可愛いコ、江頭さんなのです。

みつみちゃんが聡介くんを好ましく思っていることも、聡介がみつみちゃんを他の女の子と違うと感じていることも、全部わかっちゃっているのに好きな気持ちをやめられない江頭さんがとてもとても愛おしいです。

江頭さんの他にも、みつみちゃんのクラスにはいろいろなタイプの生徒がいます。
高校生活という新しいスタートにワクワクしてドキドキしているのはみんな同じ。
それぞれがクラスに馴染もうとしていく中で、みつみちゃんはそれぞれに気づきをくれます。
本人は意図してなかったりしていますが。

この春、学校や職場などで新しい生活が始まるあなたも、みつみちゃんを見ていると、きっと気づけることがあるはずです。
新スタートをポジティブに迎えられる漫画、オススメです。

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもやってます。幻冬舎プラスで連載していた、お店をオープンするまでの連載が電子書籍『お店、はじめました。~40歳未経験のカフェオープン~』になりました。