「100万円の女たち」 青野春秋

100万円の女たちicon

「100万円の女たち」(1)
青野春秋/小学館

『おくらのあな』100号突破!おめでとうございますぅ〜パチパチパチパチ〜〜〜ッ!!て,今回は101号なのですが。

100号突破に因んでタイトルに100のついた漫画をば……と,色々ある中から,やや強引かと思いましたが『100万円の女たち』を紹介させていただきます。

道間誠(みちましん)31歳。職業は小説家。

ただし,「売れない」だ。生活費もそろそろ底をつき始めてバイトでもしようかと考えていた矢先,突然,毎月100万円の家賃を払って同居する女性が5人も(しかも全員若く,現役JKまでいる!)登場……。

という荒唐無稽な設定で物語は始まります。

鈴村みどり(すずむら みどり)17歳。兄(?)に金を無心されるちょっと根暗なJK。

小林佑希(こばやし ゆき)24歳。論理的で冷ややかな物言いをする既婚者。

塚本ひとみ(つかもと ひとみ)26歳。一番陽気で闊達。

居間でヨガをするのが日課。 開菜々果(ひらき ななか)20歳。不思議な魅力がある。実は世界的に有名な女優。

白川美波(しらかわ みなみ)30歳。家では素っ裸。超高級コールガール倶楽部の社長。

5人の女たちは,「招待状」を受け取ってこの家に集まりました。

同居には,5つのルールがあります。

①女たちへの質問禁止 →なので,道間は彼女たちが語らない限り,彼女たちの私生活を知るすべもなく,「招待状」の内容もわかりません。

②女たちの部屋に入らない →なので,道間と女たちとの間に「うっふん」な関係は基本的には生じません。

③夕食は全員一緒に →なので毎日の夕食時のやりとりで彼女たちのキャラが徐々にわかります。

④女たちの世話は道間がする →なので,道間は毎日小説を書きつつ,家事をする訳ですが,女たちには遠慮なく文句を言います。

⑤家賃は毎月100万円 →なので,道間は相変わらず「売れない」小説を書き続けることができます。

そして,道間の小説にもルールがあります。

「小説の中で誰も死なない。」です。

担当編集者の桜井だけは,道間の才能を信じて,励まし・仕事を依頼してくれる中,道間は自分の書きたいものを丹念に書き続けます。

他方,居間にあるファックスから「死ね」「人でなし」といった忌まわしい言葉の書かれた用紙が吐き出されるのが日常化しています。

物語が進むにつれ,女たちの素性が明らかになっていきますが,共通しているのは,女たちは全員強く,道間を攻撃してくる嫌な男たちを完膚なきまでに打ち負かします。

道間を敵視する評論家や流行作家,小説にかける道間の気持ち,女たちの道間に対する思いといったことが分かってきたかと思いきや……中盤を過ぎたあたりで,人が殺され始めます。

そう,道間の書く小説とは違って。

はてさて, なぜ・誰が,忌まわしいファックスを毎日送り続けられるのか?

なぜ,道間の小説では誰も死なないのか?

果たして,道間の小説は売れるようになるのか?

招待状には何が書かれてあったのか?

招待状を送ったのは誰で,その目的は?

女たちが100万円もの家賃が払えるほどの経済力は何なのか?

なぜ女たちは招待状に従う気になったのか?

女たちが同居を続ける理由は?

そして凄惨な事件の犯人は?

目的は?

本作は野田洋次郎さん主演でNetflix・テレビ東京のタッグでドラマ化されたので,ご存知の方も多いかと思います(現在もNetflixで全話視聴できます)。

確かに,ドラマは豪華キャスト,優れた脚本で面白く仕上がっています。

ですが,青野春秋先生独特の絵柄と間,ユーモア,残酷さの入り混じった原作全4巻には映像では表現しきれないモノが満載です。

特に4巻に掲載されたコミック描き下ろしのエピローグ!これを読むために1巻から順番に読んでいく価値ありです(先読み厳禁)。

そして,そして,説明しすぎないタッチが読者に行間(あ,漫画なのでコマ間?)を読み取らせ,本作をなんども読み返して,登場人物たちの心情,世にある理解しがたい悪意,犯罪被害者・加害者の人生……を考えたくなるような良作に仕上げています。

お試しを!

推薦者
小林美也子

Kobayashi miyako

教育&映画プロデューサー

漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画制作にも関わる。