「兄友」赤瓦もどむ

〜兄の友は兄の友って存在だったなぁ……〜

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「兄友」(1)
赤瓦もどむ/白泉社(花とゆめコミックス)
<全10巻>

今回の漫画は『兄友』です。
兄の友だちとお付き合いすることになるという……
いきなり疑問なのですが兄弟の友だちって恋愛対象になるんでしょうか?

私は中学生くらいまでは、Tシャツ短パン(しかも兄のおさがり)で暮らしていたので、3コ上の兄の友だちからは兄の弟扱いされたりして、そんな色っぽい話は全くなかったから余計にそう感じるのかもしれません。

という個人的体験はさておき、今回兄の友だちとお付き合いするのは、高校2年生の七瀬まいちゃんです。
同級生が夢中になっている恋には興味がなく、家事全般が得意なため所帯じみているといわれたり、家では主婦のような存在になっています。

とある雨の日、1コ上の兄が家に連れてきた友だち、西野壮太くんが「妹さん、かわいいな」と言うのを聞いてしまって以来、急に壮太くんのことが気になり始めます。

そもそも1つの部屋をむりやり2部屋にした七瀬家なので、兄とまいちゃんの部屋の間の壁がとても薄く、会話が筒抜け、というのがこの話のキッカケでもあります。
隣室の声が聞こえちゃう、ってだけでそんなドラマが生まれるかな?
と思うのですが、最後まで話のキー的なものとなってきちんと回収されるので忘れずにいてください。

とにかく2人ともウブすぎて、恋の進展にいちいち時間がかかるのです。
兄に「ヘタレ」「幼稚園児か」と言われている壮太くんにいたっては、まいちゃんの下の名前を聞くのに連載一回分使うほどです。
結局聞けても名前で呼ぶことができず「七瀬さん」と呼ぶ壮太くん、可愛すぎるでしょう!

まいちゃんも、もともと恋愛に興味がなかったし、壮太くんのこともタイプとはちょっと違うみたいだったので、そもそも「これは恋なの?」みたいな自問自答がたびたびあります。
でも、恋心を自覚してからは、まいちゃんの方が積極的になるのが可愛らしく、それにドギマギしちゃう壮太くんもとても良いのです。

そんなウブな2人が少しずつ彼氏彼女になっていくのを見守るのが楽しくてしょうがなかったです。
今までいろいろオススメ漫画を紹介してきましたが、基本的に純な恋人同士が好きなんですね、私。

実はドS気質なまいちゃんの兄をはじめ、周りの友だちは恋愛上級者だったりクセのあるキャラクターが周りを固めているのも魅力のひとつです。
個性的な周りの人たちに時には翻弄されながらも、2人のペースでゆっくり愛を育んでいるのが微笑ましく、目が離せなくなります。

ただ、1つ言いたいのは、まいちゃんの暮らす街、ゲリラ豪雨多すぎです(笑)
最初に壮太くんがまいちゃんの家に来た時もそうですが、誰かが突然の雨に降られて誰かの家に上り込む、お風呂までいただいちゃう、という展開が多めなのは、誰もが憧れるシチュエーションだからなのでしょうか。

ウブな2人のウブ・ストーリー、10巻でキリよく終わっているので、STAY HOMEな今の時期の読書にもぴったりでオススメです。

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもやってます。幻冬舎プラスで連載していた、お店をオープンするまでの連載が電子書籍『お店、はじめました。~40歳未経験のカフェオープン~』になりました。