「ゲーム・ウォーズ」アーネスト・クライン

〜いま私たちに必要なのはOASISだと思うんです!〜

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「ゲーム・ウォーズ」(上)(下)
アーネスト・クライン/SBクリエイティブ

最初に謝っておきますが、今回はオススメ漫画の記事ではありません。
イレギュラーですが、小説映画のオススメを紹介したいのです。
気に入っていただければ、ステイホームですることが増えるかもな作品です。

『ゲーム・ウォーズ』は、『レディ・プレイヤー1』として公開された映画の原作本です。
映画はスピルバーグ監督作、日本人俳優を起用、ガンダムやゴジラが出ると話題になりました。
人々は荒廃した地に「スタック」と呼ばれるトレーラーハウスを「積み上げた」ものに住み、宅配ピザはドローンが運ぶ……。2045年というわりと近い未来だけれど、かなり荒んでしまっている世界が舞台です。

2025年にジェームズ・ハリデーという天才ゲームクリエーターが作ったオンラインゲームOASISが瞬く間に全世界に広まり、単なるゲームではなく様々な問題がある現実世界に代わり、多くの人の生活の場になっています。
25セントの登録料、ヘッドマウントディスプレイとグローブを用意するだけで、なんでもできる仮想空間で理想の姿になれる、それがOASIS(存在論的人間中心感覚没入型仮想環境)です。
なんと学校や多くの会社もOASIS内で通えるようになっています。

2040年にハリデーは死去してしまうんですが、その遺言によりOASIS内に隠された鍵3つを最初に見つけた一人にOASISの全ての権利を譲渡するというゲームが始まります。
OASISでは「パーシヴァル(Parzival)」と名乗っているこの物語の主人公、高校生のウェイド君もそのゲームにのめり込んでいるひとりです。

OASISの権利を勝ち取って今の暮らしから抜け出したいという個人的な目的とともに、IOI(アイ・オー・アイ)という世界最大のインターネットプロバイダーがOASISを支配するのを阻止したいという正義感も持ち合わせています。
謎をとくために、人一倍真剣にハリデーについて、そして彼が好きだったという「80年代ポップカルチャー」について研究しています。

この物語では「80年代ポップカルチャー」がかなり重要なポイントなのです。
80年代にはまだ幼かった私にとっては、ほとんど覚えのない音楽や映画、ゲームなどがたくさん出てきます。
特に小説の方には数え切れないほどの作品が挙げられていて、知らない作品は知りたいと思うのですがひとつチェックするだけでかなり時間がかかるので、初めて読んでから2年くらい経った今でも全ては見きれていません。

映画の方もこの80年代のポップカルチャーが映像の中にこれでもかと散りばめられていて、宝探しのような作品になっています。
冒頭からヴァン・ヘイレンの「JUMP」、プリンス「I Wanna Be Your Lover」、ティアーズ・フォー・フィアーズ「Everybody Wants To Rule The World」などがかかり、私でも「この曲、知ってる!」と嬉しくなりました。
もちろん、80年代のポップカルチャーを知らなかったとしても、スピルバーグが得意とするジュブナイル、冒険譚ですから、十二分に楽しめますよ。

原作がある映画の宿命として、どれだけ再現できたか、どちらが優れているかと比較してしまいますが、私は映画もよくできていると思います。

映画を観てから原作本を読んだのでそう感じるのかもしれませんが、原作本のあの膨大な量のオタク的熱量の話をよく140分の映画の中で、大衆にも受ける形で表現できたと思います。
むしろウェイド君たちがゲーム内で探している3つの鍵が小説だと正直地味なのですが、映画では納得のいくスケールになっていたのは、映像表現ならではだと思います。

また、原作にある「ムービーシンク」という没入型インタラクティブ・ゲームを映画の中ではとある有名な映画に入り込むというシーンで表現しているのですが、その再現度は映画を観たことがある人なら感動するはずです。
私はその映画を観てなかったので後から観たのですが、それでも感激しましたよ。

ちなみに映画『レディ・プレイヤー1』を私は公開中に劇場に何度か観に行って、その後デジタル版を買い、さらにBlu-ray版も買ったので、尋常じゃない回数この映画を観ています。小説の方も、英語のペーパーバックを読み、日本語翻訳本も何度も読みなおしています。

ここまで入れ込んでしまったのは、
実は映画版の主人公のパーシヴァル(ウェイド君のアバターです)が、非常にかっこよくて好みのタイプだったからです!
パーシヴァルをあの姿で生み出してくれたスピルバーグ監督とデザイナーチームには感謝しかないです。

緊急事態宣言が解除されたとはいえ、今はまだまだ家で過ごすことが推奨されている状況だと思いますので、この小説を読んだり映画を観て、気になった80年代ポップカルチャーをぜひチェックしてみてください。
私は映画で使われていた曲、トゥイステッド・シスターの「We’re Not Gonna Take It」に衝撃を受け、いつもは全く聴かないジャンルなのですがヘビロテで聴いています。
新しい発見が次々と出てくるこの作品は、ステイホームにピッタリでオススメです!

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもやってます。幻冬舎プラスで連載していた、お店をオープンするまでの連載が電子書籍『お店、はじめました。~40歳未経験のカフェオープン~』になりました。