「おもたせしました。」うめ

〜「おもたせですが……」って言われたーい♪〜

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「おもたせしました。」(1)<全3巻>
うめ/バンチコミックス

『東京トイボックス』『スティーブズ』などのうめ先生によるグルメ漫画です。
グルメ漫画といっても料理のレシピを紹介したりするものではなく、
お店で買ってきた商品、いわゆる「手土産」を紹介していく漫画です。

出版社の説明によると……
 主人公の寅子は仕事柄、取引先や友人知人など訪問が多い毎日。
 その際に何か必ず“手土産”を持って行くことを生きがいにしている。
 ただし寅子が選ぶ手土産の条件は……“自分が食べたい”もの! 
 実際のお店の名物料理をテイクアウトして、
 その美味しさを他人と共有する“コミュニケーショングルメ漫画”の開幕です!

寅子さんは叔母さんである桜さんのお仕事をお手伝いしている
アラサーくらい(想像です)の女性です。
仕事柄、と書いてありますが、桜さんのお手伝いとは秘書的なことなんだろうな、
くらいしかわかりません。しかもこの桜さんのお仕事がよくわからない。

出版社や作家のお宅にもお邪魔していたりするので、文筆業なのかなーと
私は予想しました。時々大学講師をやったりもしているようなので、
何らかの研究者でもあるのだと思います。
漫画家や作家に必要な資料を探してあげる、
みたいなマッチング業的なこともやっているのかもしれません。
ということは、シンプルに編集者だったりするのかも……?

または寅子さんの名前が夏目漱石の弟子の寺田寅彦から来ているなら、
桜さんはやっぱり作家なのかも……?
寅子さんと桜さんとのやりとりは基本LINEかメッセージで、
結局お顔も拝見できない桜さんの謎は深まるばかりです。

とにかく、その桜さんに頼まれて資料などをお借りしに行ったり
お返しに行ったり、寅子さんはいろいろなお宅にお邪魔します。

相手に喜んでいただけるように考えて選ばれるのが手土産ですが、
寅子さんチョイスは基本的に自分が食べたいもの!
しかも、たいていご相伴にあずかる流れになってしまうのが、
寅子さんの人徳なのでしょうか。
(またはお腹の音をスルーできない訪問先の皆さまの優しさですね)

そして、この手土産にまつわる寅子さんのウンチクが毎回面白いのです。
文学に詳しい寅子さんが語るのは文豪のエピソードが多く、
かなり細かい話もあって楽しめます。
このエピソードありきなのか、手土産ありきで調べているのか……
うめ先生も桜さんの手を借りて描いていそうですね。
さらに寅子さんはほぼ毎回その手土産にぴったりのお酒を飲んでいるので
間違いなく食べたーい、飲みたーい、となります。

そう、この漫画で紹介されているのは実在する手土産なので、
気になったものは買いに行ける嬉しさがあります。
(毎回ショップデータも最後に付いているので親切です)
都内で買える物が多いので、入手が難しいものもあるとは思いますが
機会があれば買ってみたい物ばかりです。

私は第2話「松露の玉子サンド」、第17話「京橋 伊勢廣の焼鳥」に出てくる
本郷の若センセイとのエピソードが好きです。
玉子サンドは食べたことがあるので、「分かる、美味しいですよねー!」と
共感できますし、焼鳥は「食べたい!めっちゃ食べたい!」となりました。

有名なものからこんなのあるんだ、という逸品まで、
いろいろな手土産が紹介されていきますが、寅子さんのウンチク話や
訪問先の方々との何気に深い会話も楽しめるグルメ漫画、オススメです。

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもやってます。幻冬舎プラスで連載していた、お店をオープンするまでの連載が電子書籍『お店、はじめました。~40歳未経験のカフェオープン~』になりました。