〜渋谷くんの意外な一面にギャップ萌え,そして,世界一感動できる告白シーンに萌え死に間違いなし。〜
「お迎え渋谷くん」(1)<既刊6巻> |
保育士歴6年目の青田愛花28歳。
子供が大好きで仕事にもやりがいは感じているが,気遣いが仇になって,同僚の仕事まで引き受けてしまいオーバーワーク気味。
そんなある日,園児・渋谷音夢(りずむ……キラキラネームですね)の兄,渋谷くんが両親に代わって送り迎えをするとやって来る。
「リズちゃんのお兄ちゃんって有名なんですよー。21歳でイケメンで〜」と保育士たちがザワザワしている。
音夢を溺愛し,「これからは僕がキッチリ送り迎えしますんで,よ・ろ・し・くお願いしますね」と圧をかけてくる渋谷くんに,「これは大クレーマーになる可能性を秘めている!!!」と恐れを感じる愛花。
「リズちゃんのお兄ちゃんって有名なんですよー」は,クレーマーとしてなのかと変に納得し,ビビりまくっているところに,音夢が園児とケンカして叩かれ,ギャン泣きしてしまう。
思わず渋谷くんに謝る愛花。てっきり,渋谷くんに叱責されるかと思いきや……!
「どうしてあやまるんですか?子ども同士のケンカです。あなたが僕にあやまる必要ありますか?……いまみたく馬鹿正直に働いてたら,あなたいつか壊れますよ」と冷静に声をかける渋谷くん。
そんな渋谷くんの声を聞きつつも,熱を出して倒れてしまう愛花。
そんな愛花を保健室に運ぶ渋谷くん。
熱を出しながらも音夢を気遣う愛花に心を打たれる渋谷くん。
愛花が自宅で静養していると,テレビCMに出演している渋谷くん。
なんと,彼は今をときめく人気俳優だった!
と,ここまで書くと,「仕事に疲れたアラサー女子が,年下イケメン有名俳優と劇的な出逢い……少女漫画の王道じゃん。ふん」と思われるかもしれませんが,この出逢いには深〜い布石があるのです。
渋谷くんは同じ事務所の俳優・神田くんの嫉妬の対象にもなるほど,どんな役もこなせる超人気俳優。
幼い頃から勉強もスポーツもできて,わがままを言わず,今や俳優業の傍ら,家事も音夢の送り迎えもこなす超優等生。
若き両親は,決して虐待とかする訳じゃないけど,超マイペース。母親はギャルがそのまま子供を産んだような頼りない女子。
家事も音夢の子育ても渋谷くんに頼りっぱなし。
イケメンで渋谷くんと兄弟かと見紛うばかりの父親は,女グセが悪く家を留守にしがちで,母親は渋谷くんに泣きつくしかしない。
本当に非の打ち所のないパーフェクトな渋谷くんですが,なんか怪しいですよね。
そうです。渋谷くんは,愛花に放った言葉そのままに徐々に壊れて行きます。
一方,出逢った時から惹かれ合う愛花と渋谷くんの恋愛模様は,遠慮がちというか,不器用さゆえ,なかなか進展しないのですが,そのやりとりがちょっとずれていてコミカルなところが秀逸です。
加えて本作の何よりもユニークなところは,愛花にとって悩みや葛藤になりそうなネタが,ふわっと,ゆるっと描かれているところです。
愛花が年上だとか,渋谷くんが人気俳優だとか,壊れた渋谷くんが起こした事件だとか等等,そんなことで愛花がグジグジ悩んだり,焦ったりすることが全くないのです。
決して愛花が逞しくも強烈なキャラクターなわけではありません。
あくまでも,ふわっと,ゆるっと。
でも,愛花が渋谷くんをあらゆる意味で信じる強さが,不思議といつのまにか伝わってくるのが本作の真骨頂です。
また,2人を囲む,どのキャラクターも魅力的です。
まるで兄か父のように愛花に寄り添う幼馴染で大の仲良し,偏差値70超えの大人な中学生・ぽんちゃん。
何があっても渋谷くんを支える漢気のあるマネージャー,品川女史。
渋谷くんをライバル視しながらも,良き理解者でもある同じ事務所の俳優・神田くん。
放浪生活をおくる自由奔放な性格の漫画家・渋谷くんの弟。
「にいに,にいに」と渋谷くんを慕う妹。
あくまでもマイペースで,家族のことは二の次のサイテーだけど,どこか憎めない渋谷くんの父親。
そして,そして,筆者が本作を何よりも推す理由は,不器用な渋谷くんが愛花に想いを告白するシーンの圧倒的な美しさです。
古今東西,映画,小説,漫画,ドラマ……様々な告白シーンを観て・読んで,素敵だなとか,うっとりすることは多々あります。
ですが,泣けるほど感動できることって,そうそうありません。
大げさでなく,漫画史上に残る名・告白シーンの一つだと思います。
このシーンにめぐり逢えるだけでも,本作を手にする価値はあります。
お試しを!
推薦者 Kobayashi miyako |
教育&映画プロデューサー 漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画制作にも関わる。 |
♥2021年1月27日まで1〜5(マーガレットコミックスDIGITAL)がお試し版で無料になってます。