「Bread & Butter」芦原妃名子

〜やっぱりパンが好き!〜

Bread & Butter_icon

「Bread & Butter」(1)<全10巻>
芦原妃名子/集英社(マーガレットコミックス)

寒い日が続くと温かいシチューが美味しいですよね。
こんな季節は美味しいパンが……この出だし、なんだか既視感がありますね。
前々回にもパンが好きという話をしましたが、
あいかわらず美味しいパンが食べたい日々を過ごしています。
そんな年の瀬、好きなパン漫画(そんなジャンルはないかも)の筆頭が完結したので、
今回はこちらの『Bread & Butter』をオススメします。

主人公は10年以上勤めた仕事を辞め、就活中が転じて婚活中の柚季(ゆずき)ちゃん(34)。
ある日、シャーペンの芯を買いに入った文具店で、なぜか一緒に売られていたパンを買います。
その美味しさにビックリし、そのパンを作った店主の洋一さん(39)が気になり……。

なんと出会って2回目に柚季ちゃんが洋一さんに突然のプロポーズ!
「なんで(笑)」と思いますが、洋一さんもまさかのOK!
「なんでなの、あなたたち(笑)」……展開が急すぎます。
出会ったばかりの男女がなぜか突然結婚することになり
そこから物語が始まる、という少女漫画的な設定かと思いきや、
すぐには結婚(入籍)はしません。結婚を見据えたおつきあいが始まる、
ということです、さすがに大人ですからね。

ふたりとも初婚ですが、洋一さんは15年一緒に暮らしていた彼女がいたそうで、
どんな人だったのか、なぜ別れたのかも気になるところです。
主役のふたりはもちろん、周りの夫婦、元夫婦、交際中のともだちなどなど、
結婚にまつわる悩みに溢れる様々なカップルが登場し、「結婚とは何かね?」
というところをその都度考えさせられてしまいます。
いろいろあって結婚は一度白紙に戻すことになったふたり。
交際は続くものの今後は未定になったりして、やきもきさせられちゃいます。

パン漫画なので、もちろんパンもたっぷり出てきます。
とにかく洋一さんの作るバゲットが美味しそうなんですよね。
採算度外視で良い素材を使っているそうですが、それだけじゃなく
研究熱心な洋一さんが何度も試作して作ったバゲット、絶対美味しいはずです。

最初は洋一さんのパン屋さんを手伝うだけだった柚季ちゃんですが、
自分でも本格的にパンを作りたくなっていきます。
柚季ちゃんが食べ歩く他のお店のパンがまたどれも美味しそうですし、
洋一さんと試作を重ねたフィリングを挟んで食べるタイプの小さなバゲット、
「柚季スペシャル」も絶対食べたい!

さて、パン作りが上手な洋一さんですが、ワケあって前職に戻ることになります。
そのままパンを作り続けていたい柚季ちゃんですが……。
実はこの辺からがこの漫画の本当に面白いところです。

タイトルの『Bread & Butter』には、英語で「生業」「生活の糧」
「生計の手段」「なくてはならないもの」なんて意味があるそうです。
これは、柚季ちゃんと洋一さんが、さらに彼らを取り巻く周りの人たちが、
それぞれの『Bread & Butter』を見つける物語なのです。
読んでいるみなさんも、自分にとっての『Bread & Butter』は何かなって
思いながら読むと、より深く面白く読めると思います。

私は洋一さんのバゲットと、柚季ちゃんが修行したお店のブールと、
柚季ちゃんの先輩の五十嵐さんが作るトリュフパンも食べたいです(食べ過ぎですね)。
厚切りトーストにバターを乗せてコーヒーと一緒に読みたい漫画、オススメです。

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもやってます。幻冬舎プラスで連載していた、お店をオープンするまでの連載が電子書籍『お店、はじめました。~40歳未経験のカフェオープン~』になりました。

(2021年1月4日まで電子版1巻が無料になってます)