「対ありでした。〜お嬢さまは格闘ゲームなんてしない〜」江島絵理

めちゃくちゃかわいい女の子たちが闘志剥き出しで殴り合う!?

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「対ありでした。〜お嬢さまは格闘ゲームなんてしない〜」(1)<既刊3巻>
江島絵理/KADOKAWA

東京オリンピックが全日程を終え、今はパラリンピックの真っ最中ですね。
日頃のトレーニングの成果を桧舞台で競い合うことのできる選手たちは、さぞかし楽しいんだろうなって羨ましくなります。
もちろん、常人には計り知れない大変な苦労の上に成り立つ楽しさなんでしょうけどね。
オリンピックに長い歴史があるように、人間がたくさんいるからには”対戦”したくなるのは必然なんでしょう。

そんな人類の歴史上”最先端の対戦”を楽しむことができるのが、近々オリンピックの正式種目になるんじゃないかとも言われている対戦型ビデオゲームです。

さて今回ご紹介する作品は、たまたま見かけた表紙にまず惹かれました。
「対ありでした。」という対戦ゲームで使うスラング(”対戦ありがとうございました”の略)の文字に、怒った顔でボロボロ涙を流している美少女の絵という組み合わせ。こりゃなんだと試し読みしてみたら数ページでハマって即買いしました。

舞台は全寮制のお嬢様学校で、格闘ゲーム(格ゲー)にどハマりしている女子高生の物語です。
ちなみに格ゲーとはレバーや複数のボタンを駆使しながら画面内のキャラクターを操って1対1で戦う、対戦型ビデオゲームの1ジャンルです。

主人公のひとりは”白百合さま”と呼ばれている全校生徒憧れの美少女。
お嬢様ばかりの学校の中でもひときわ近寄り難い気品を纏っていて、みな遠巻きにして褒め称えています。

そんな白百合さまの誰にも見せていない本当の顔が格闘ゲームプレイヤー(格ゲーマー)なんです。

しかもネット対戦の顔も知らない相手を負かして”糞雑魚ッ!!!”とスカート捲り上げて煽っちゃったりするほどの気性の持ち主で、およそ周りからのイメージとは真逆。
そんな白百合さまの素の姿を、平凡な家庭で育ちつつもお嬢様っぽさに憧れているもうひとりの主人公である綾さんが目撃してしまいます。
白百合さまは涙ながらに後生だから先生には内緒にして欲しいと綾さんに懇願します。
実はこの学校はゲームが禁止されているのでバレたら退学になっちゃうかもなんです。

なぜ格ゲー好きなのにゲーム禁止の学校に入学したのかは後々明かされますが、そんなわけで使われていない教室でいつもこっそりひとりで格ゲーのネット対戦をしていたというわけです。

しかしほどなくして白百合さまは嗅ぎ付けます、綾さんから自分と同じ格ゲーマーの匂いを!

舞台が女子校ということもあって序盤では女の子しか出てきませんが、その女の子たちがとてもかわいく描かれています。
中でもやはり白百合さまは別格で、冒頭の白百合さまが綾さんに壁ドンするシーンでは読んでるこちらもドキドキときめいてしまいました。
これが百合萌えというやつなのでしょうか。

そして、そんなかわいい女の子たちが、ビデオゲームの中でも骨太なジャンルである格ゲーで闘志を剥き出して戦うというギャップがこの漫画の最大の魅力です。

また、彼女たちがハマっている格ゲーは「アイアンセンパイ」という架空のタイトルなんですが、ゲーム内のキャラクターや技が魅力的に描かれているところも好きです。
作者の方がご自身も格ゲーマーなんだと知って納得しました。

ちなみに同じく高校生の格ゲーマーを描いている月刊コミックバンチ連載中の「東京トイボクシーズ」でも「サムライキッチン」という架空のタイトルが描かれてますが、これまた実在の格ゲーなんじゃないかと思うくらい設定が作り込まれてて思わず検索しちゃったくらいです。
対戦シーンはほぼゲーム画面で展開することになる格ゲー漫画においては、読者に自分もあのキャラでプレイしてみたいと思わせてくれるような格ゲーかどうかも大事なポイントです。

ネタバレになっちゃうので詳しくは書けませんが、地道な練習を繰り返すことの大切さや、強そうに見える対戦相手もやはり自分と同じように緊張しているということがわかるエピソードにとても共感しました。
そのエピソードのコマは記憶の引き出しに保管しておいて、努力が報われないなって感じたり、対峙する相手に呑まれそうになったときなどに取り出して眺めようと思います。
文字だけでなく、映像でもなく、コマという単位で心に残せるのが漫画の良いところですね。

現在コミックスは3巻までが発売中。
クセのある登場人物が増えてきてこれからどんな対戦が繰り広げられていくのかワクワクが止まりません。
まだお読みになっていらっしゃらないみなさまは、今のうちに追いついていらっしゃってはどうかしら?

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推薦者 たかしまてつを

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