「ぼくらの葬列」朝霧ユウキ

人は人にあらざるものを捕食,殺害,廃棄する。しかし,人と人にあらざるもの境目は何なのか……?

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「ぼくらの葬列」
朝霧ユウキ/講談社

週刊少年マガジン60年の歴史の中で、わずか6人目の最高賞! 

第102回新人漫画賞にて、『ぼくらの葬列』で特選を受賞した新人漫画家・朝霧ユウキ先生。

読み切りでは物足りない!ぜひ長編で読みたい!

そんな読者の声を反映してか, 11月9日発売の別冊少年マガジン12月号(講談社)より連載開始。

本稿執筆時点で,わずか連載開始2話目ながら,すでに話題沸騰となっている衝撃の作品です。

殺処分でなく「お見送り」,駆除ではなく「直葬」,死体ではなく「ホトケ」,駆除係ではなく「直葬隊」。

直葬隊。

それは、新種の病の蔓延により出現した「人だったモノ=ホトケ」の殲滅を目的とした、国家公認の防衛組織。

ワクチン開発不能とされた新型ウィルス蔓延から10年。

感染者は肉体変化を起こし,脳の壊死が始まると人を捕食するようになる。

輸血や接触で血液感染した時点で国からは死亡したと判断され,直葬隊は「お見送り」をする。

新人賞受賞作品では,ウィルスが蔓延した世界と「直葬隊」で働く青年の苦悩を描き,今後を予兆する形で終了。

連載作品では,打って変わって,気弱でいじめられキャラの中学生・西条海斗を主人公に物語は展開します。

海斗が密かに想いを寄せる少女は,直葬隊を嫌う。

しかし,その小さく淡い恋心が、やがて海斗自信を「人ならざる者」の世界へ誘って行く――。

思春期の少年の心情を描きつつ,日常の儚さ、残酷な非日常が日常になった時,中学2年生の少年の成長を描いて行く……?

まだ連載2回目なので,「?」なのですが,新人賞受賞作品といい,連載作品といい,とにかく展開が早い。ジェットコースター並みの展開,物語の世界観をギュッと凝縮して読者に伝える手腕の見事さ。緻密さと魅力溢れる画風……。

は~~~。マンガの世界に集まる才能は本当に凄い。
すでに,アニメ化,映画化の話は進んでいることだろうと想像に難くはありません。

大ヒット作品,『寄生獣』『鬼滅の刃』,いずれも「人にあらざるもの」との戦いが描かれるのですが,人々の心を打つのは,主人公が「人にあらざるもの」へ心を寄せ,戦うことに苦悩するところです。

我々「人」は,人にあらざるものを殺害,捕食,駆除することで生きているし,そうせざるを得ないのですが,果たして人と人にあらざるものの境目は何なのか?

本作は,ど正面からこの命題に挑戦する意欲作でもあります。

新人賞受賞作,連載1~2話目は各漫画サイトで読書可能です。

この新しくも古典的とも言える意欲作をぜひ!

【新人賞受賞作品:特別読み切り公開URL】

https://pocket.shonenmagazine.com/episode/10834108156658105864

推薦者
小林美也子

Kobayashi miyako

教育&映画・演劇プロデューサー

漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画・舞台制作にも関わる。