アニメ「サザエさん」原作 : 長谷川町子

2024年時点で放送年数55年を超えるギネス世界記録を保持している,古くて新しい長寿アニメ。

アニメ「サザエさん」
原作:長谷川町子
アニメーション制作:エイケン
製作:フジテレビ・エイケン
放送局:フジテレビ
放送期間:1969年10月5日~

筆者も幼少期は毎週日曜日の18時30分,チャンネルを8(大阪在住だったので)にあわせたテレビの前で「東芝の提供~」の呼び声とともに「サザエさん」が始まるのを待っていました。
実家は読売新聞購読者だったので,原作漫画は朝日新聞(1951年から朝日新聞で連載)ではなく,単行本で読破。

とりわけ,長谷川町子先生自ら面白いと思ったものをよりぬいたベスト版『よりぬきサザエさん』(朝日新聞社より復刻版が出版)は愛蔵版として,何度も何度も読み返したものです。

最近,ネットでアニメのサザエさんを一気見する機会があり,あらためてその凄さに感動したので,今回,ご紹介……というよりも,感動を共有したく書かせていただくことにしました。

サザエさんの家族(親族・ご近所さんも含め)構成や,住む町,家の間取りに至るまでネットにあらゆる情報が飛び交っているので,わざわざご紹介するまでもないでしょう。

55年以上もの間には,時代も価値観も技術も大きく変わり,四季の移ろいや年末年始を描きつつも,登場人物は寸分も歳を取らない。

何年経とうが,毎年春には新入生や新入社員が登場し,3歳のタラちゃんは数年後に買ってもらう予定のランドセルに憧れ,毎夏の終わりには小学5年生のカツオは夏休みの宿題に追われ,秋になれば小学3年生のワカメは2年前の七五三の振袖を懐かしみ,伊佐坂家の長男は延々と浪人生をやっている……。

ずっと見ていると,「? 彼らの住む世界は永遠にループしている。

もはやSF?」と変な感慨に耽ったりするものの,微妙に価値観や登場するモノがアップデートしているのも面白い。

日めくりカレンダー(これも懐かしい?)が画面に出てくると「2002年」とあったり,花沢さんのお父さんがガラケーで電話していたり。

何よりも筆者が感動したのは,キャラクターの描き方。

さすがアニメ業界の脚本家として第一線で活躍し続ける執筆陣が描くセリフとアクション(単に「行動」の意)は素晴らしい。

お雛祭りに雛人形を飾りながら,

ワカメ「今日は女の子のお祭り。私のお雛様よ」

タラちゃん「おばあちゃんとママの雛人形は無いんですか?」

フネ・サザエ「え?」

タラちゃん「おばあちゃんもママも女の子です~」

それを聞いたフネとサザエが「まぁ」と頬を染める。

タラちゃん,将来絶対モテる男に成長するぞ。

ある日,台所で用事をしているフネにカツオが質問する。

「お母さんは女の人に生まれてきて良かったと思う?」

フネ「そりゃそうよ。良妻賢母で愛嬌があって家計の切り盛りがうまくて料理が上手で,こんないい母さんを男にしたらもったいないわよ」

「学校の宿題なんだ~」と言って家を飛び出すカツオを慌てて呼び戻しに行くフネ。

夫の波平を立て控えめで昔気質な専業主婦のフネの中に,人としてのプライドと真の強さを垣間見せたエピソードだ。

磯野家のお隣に住む小説家の伊佐坂先生。ハチ(伊佐坂家の飼い犬)の餌の缶詰を持って磯野家にやってくる。

「缶切りをお借りできませんでしょうか?妻が留守で,缶切りがどこにあるかわからなくて」

サザエ「あら,これはこうやって開けるんですよ」とプルトップを引いて缶詰を開ける。「今時の缶詰は缶切りなんていらないんですよ~(笑)」

伊佐坂「へ~。それは,それは。これだと,缶切りが売れなくなって,缶切り業者が困っていることでしょうね」

このわずかなやり取りだけで,伊佐坂氏の育ちと普段の生活ぶり,そしていかにも小説家らしい興味関心の持ち方が表現されているではないか。

クレジットを見ると,脚本に雪室俊一先生のお名前がっ!!

はは~~~~~っ。お見それいたしました~。

脚本の勉強に『サザエさん』を改めて見直そうと,反省しきりの筆者でございました。

最後に『サザエさん』といえば,声優さん。

今や,唯一人の放送当初からのメンバー,加藤みどりさん。

サザエさんの声には,そこはかとない色気があって,なんか,いいんです。

そんなこんなで,想像を絶するほどの人々の工夫と努力と才能,そして作品に対する愛情が永遠のサザエさんを支えているんだなぁと感心しつつ,毎夜毎夜『サザエさん』を見返す筆者です。

推薦者
小林美也子

Kobayashi miyako

教育&映画・演劇プロデューサー

漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画・舞台制作にも関わる。