不老不死の生首美少女探偵,忠誠心溢れるメイド,半人半鬼の青年が繰り広げる欧羅巴ミステリーの旅
「アンデッドガール・マーダーファルス」(1)<1巻> |
19世紀末。世界の日常には「怪物」が混在している。
怪物を忌避する社会,共存し平穏を目指す社会,地域によって怪物と人間の関係性は異なる。
そんな世界観と時代の物語。
明治30年,ある外国人の手によって,半人半鬼にされた青年真打津軽(しんうちつがる)は見世物小屋で怪物殺しの見世物を行っていた。
津軽の前に鳥籠に入った生首の輪堂鴉夜(りんどうあや)と従者の馳井静句(はせいしずく)が現れる。
鴉夜(あや)この世に一人しかいないとされる「不死」と呼ばれる怪物で,実年齢は962歳(肉体年齢は14歳3ヵ月)。
「不死」の体を持つ鴉夜は,負傷しても驚くほどの回復力で再生する。ただ,「鬼」の手にかかると,致命傷を負い,死を迎えることもある。
物語から1年ほど前に半人半鬼の力で首を刎ねられ,死にはしなかったものの胴体を再生できず生首だけの姿になる。
生首のまま生き恥をさらし続けたくないと考える鴉夜(あや)は鬼の力を持つ津軽に殺してもらおうと考えていた。
他方,半人半鬼の津軽は,鬼に侵食されつくされるのを恐れていたが,不死である鴉夜の唾液を定期的に摂取すれば,鬼の侵食を食い止めることができる。
鴉夜(あや)に生き続けさせたい津軽は,鴉夜(あや)の肉体を取り戻すことに協力する代わりに唾液をもらい続けるという取引を持ちかける。
津軽を半人半鬼にし,鴉夜(あや)の肉体を奪った一味の本拠地は欧羅巴らしい。
そこで,3人は「怪物専門の探偵」を名乗る“鳥籠使い”としてヨーロッパに渡り,吸血鬼や人狼などの怪物がらみの事件を解決しながら,体を奪った真犯人を探す旅をすることになる。
最初の舞台は怪物と人間が共生する仏蘭西。
人類親和派に転じ,慈善事業で郷土に貢献してきた吸血鬼の妻が殺された。
彼は郷土の発展に寄与したにも関わらず,妻が殺されたのにも怪物事件に関わりたがらない警察の捜査に不満を持ち,代わりに私立探偵を頼ることを考え,妻を殺害した犯人探しを鴉夜一行に依頼する。
その後,3人は欧羅巴各地で怪物がらみの難事件を鴉夜(あや)の聡明な頭脳を知識,静句(しずく)の見事なサポート,津軽の圧倒的な戦闘能力を駆使しながら解決していく。
もちろん,
ファントム,アルセーヌ・ルパン,エルキュール・ポアロ,シャーロック・ホームズ,ジョン・H・ワトスン,レストレード,ジェームズ・モリアーティ,切り裂きジャック,フランケン・シュタイン,カーミラ……
ミステリーファンなら小躍りして喜ぶようなお歴々も登場する。
若き才能・青崎有吾の原作を新人漫画家・友山ハルカが漫画したという。
作画には,技巧を凝らし,相当な作業量が想像されるが,正直,書き込みすぎ(?)で何の描写か分かりにくいこともしばしば(失礼)だった。
しかし,回を追うごとに絵柄が洗練・進化しているではないか!
人の想像力を掻き立ててやまない時代の,怪物と人間の冒険譚。
作画の進化を楽しみながらもミステリーの歴史を垣間見ることもできる秀作。
推薦者 Kobayashi miyako |
教育&映画・演劇プロデューサー 漫画と映画で人生を学び,現在は各地で法律を教えつつ映画・舞台制作にも関わる。 |
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