「のらみみ」原一雄

〜たすけて〇〇〇〇ーー!(お好きなキャラを当てはめて呼んでください)〜

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「のらみみ」(1)<全8巻>
原一雄/集英社(IKKIコミックス)

 「かつて誰もが憧れた『居候キャラクター』生活を共にし、日常をユカイに演出してくれる愛すべき異分子……そんな居候キャラが世間にあふれかえる時代の話……」(本文より)

居候キャラ……そう、それはあの青くて丸いネコ型ロボット!
ほっぺのグルグルが可愛いモコモコの犬を連れた忍者のあの子!
あんなキャラが家にいたらな~と憧れたことありますか? 
日常生活でちょっぴり困った時に「ド●えも~ん」ってつぶやいちゃう事、ありませんか?

そんなコドモたちや、かつてコドモだったオトナたちが大好きな居候キャラクターがたくさんいる世界のお話です。
わー選び放題じゃない、と思ったそこのアナタ、甘いです!
なぜなら居候キャラの方にも希望がありますからね。
彼らの憧れの居候先は「ドジでメガネの男の子(ひとりっ子)」がいる家庭ですので。

そんな居候キャラと居候先の家族の希望をマッチングするのが居候紹介所です。
ツテやコネなどで紹介所を介さずに居候先と直接交渉する居候キャラもいますが、一般的には紹介所を利用することが多いようです。
また、長らくフリー(居候先ナシ)の居候キャラにふさわしい居候先を探したり、キャラ立ちしてないと悩む居候キャラにイメチェンをお勧めしたり……
この居候紹介所業界はなかなか繁盛しているようです。

そんな居候紹介所のひとつ、ハローキッズ59号店に居候している居候キャラ、「見習いこぼうず のらみみくん」が今作の主人公です。
こぼうずと言っていますが、元々はカミナリ小僧ののらみみくん、ワケあって多少は特徴的だったツノを失ってしまいキャラが立たなくなり居候先が決まらず見習いこぼうずとして紹介所に居候しています。

自分の居候先を見つけたいのに、次々訪れる居候キャラたちの悩みを解決したり、マッチングに奔走したり……

人のことばかりでなかなか自分のことが決まりません。
そんなけなげな……と言いたいところですが、のらみみくん、
そこまで可愛くはありません(笑)。見た目もいたってシンプルな顔立ちだし、けっこう毒舌だし、気に入らないことがあると「チェッ」って言うし。
そう、最初はあまり可愛く思えないんですが、付き合っていくうちに、なんか強がっているところとかどんどん可愛く見えてくるのです。

面白いのは居候キャラたちの生態がよく分かっていないというところ。
いろんな形があって、動物タイプが一番数が多いけれど人間に近い形のものも多い。
大きさはたいていこどもと同じくらいだけど豆粒大から巨人まで存在する。
人の言葉を理解し、しゃべることができるものが大多数……。
そもそも居候キャラは本サイト「おくらのあな」主催の今井美保先生が良く描くアレだったのでは、という話もあるようで……?!

居候キャラはあまり病気などはしないようですが、具合が悪くなることもあり、専用のドクターもいます。でも全ての居候キャラを網羅するのは大変そうです。
居候キャラの突然の不調に家族も紹介所のみんなも心配してなんとか治そうとがんばっている回では、家族のように愛されているんだなーとじんわりきたりします。
居候キャラの中にはロボットタイプがいるのですが、それも本当のロボットではないので分解して修理、というわけにはいかないところも不思議なのです。

何度も登場する居候キャラもいて私のお気に入りは「のそのそ! ドッタリ君」です。
ハローキッズ59号店社員の半田君とも縁があるドッタリ君、緑色のブツブツした皮膚、頭に生えてる若葉、遮光器土偶のような目……
お世辞にも可愛いとは言えない容貌だし、「記憶力に問題有(ハローキッズのキャラファイルより)」なので、おつかいを頼んでも忘れちゃったり、居候先からいなくなっちゃったり……問題も多いのですが、なかなか人気があるのか何度も居候をしています。

何がそんなに魅力なのかなーと思うのですが、ドッタリ君の魅力を語るのは難しいです。
純粋で、無垢ではないんですけど、思いつきで行動しているように見えて、(実際思いつきではあるんですが)その原動力が優しさだったりするので、そういうところが好きです。うまく説明できないので読んでください(笑)。

居候先の都合で早めに契約解除のこともありますし、居候キャラ自身が出ていくことを決めることもありますが、基本的にはコドモが12歳ごろになると居候キャラは去る決まりです。
でもオトナになっても、きっとあの居候キャラと過ごした日々は掛け替えのない宝物ですよね。

全力で遊んで笑い転げていた頃を思い出す漫画、オススメです。
アニメ化もされていて、それもとても良かったので機会があればぜひ!

推薦者
中村文

Nakamura aya

ギャラリーカフェオーナー

大磯のギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」オーナー。画家・イラストレーターのたかしまてつをアシスタント、DTPデザイナーなどもやってます。幻冬舎プラスで連載していた、お店をオープンするまでの連載が電子書籍『お店、はじめました。~40歳未経験のカフェオープン~』になりました。