「イブの息子たち」青池保子

イブの息子たち表紙

「イブの息子たち」(1)
青池保子/プリンセスコミックス

〜端正な絵で描かれる、この馬鹿馬鹿しい物語よ!〜

「エロイカより愛をこめて」が今も連載中の青池保子先生。

私が初めて先生の漫画に触れたのは、中学1年生のときでした。
クラスで後ろの席に座っていた女の子と漫画の話をした時、彼女が「天使とか歴史上の人物がいっぱい出てくる漫画、知ってる?」と聞いてきて、私は「知ってる!あれ、面白いよねー」と返したのですが、話していくうちにドンドン内容にずれが生じ…

とどのつまり、彼女の読んでた漫画と私が読んでた漫画は似ても似つかぬ、まったくの別物だったのでした。

その時彼女が読んでいた漫画というのが、青池保子「イブの息子たち」だったわけです。

中1の純朴な少女には衝撃の内容でした。
あまりにも影響力が強すぎた。

その後どっぷりのめり込み、あろうことか、主人公3人の中で最も危険な香りのする男に惚れ込み、その後の人生を540度方向転換させるに至ったのでした。
(ちなみに、この漫画を勧めてくれた友達は一番健全な男が好きで、その後結婚し、子供が産まれ、幸せな家庭を築くというまっとうな人生を歩んでいました。どういうことだ。)

「イブの息子たち」は狂ったホモ漫画です。
今時はBLが流行ってるようですが、この漫画は私の中で、どうしてもBLにカテゴライズできない。(便宜上BLにカテゴライズしましたが)
やっぱり「ホモ漫画」が一番しっくりきます。
レズビアンも出てくるけど、この漫画の中では女は敵なんだよなぁw

主人公3人(男)はもちろんのこと、出て来る男キャラは全員ホモです。
(主人公3人の内、若干1名自分は違う!と毎回うるさくのたまってるウザいのがいますが、この漫画の中ではほぼ全員がそいつを狙ってます。)
絵は非常に丹精な(精悍な?)少女漫画ですが、BLの先駆的作品「風と木の詩」のような深刻でリアルな描写は全くと言っていい程ないギャグ漫画です。

ストーリーを簡単に説明しますと、ヒース、バージル、ジャスティンという仲良し3人組男子(全員美形)が、実は「ヴァン・ローゼ族」という男だらけの一族だと告げられ、古今東西の歴史上の人物(全員ヴァン・ローゼ族)が入り乱れる異空間へ召喚されては子どもを産めと迫られ、とんでもなく馬鹿馬鹿しい騒動へ巻き込まれる、という、ほんと馬鹿馬鹿しい話です。

でも、面白いんだな、これが。
この漫画のせいおかげで歴史上の人物を覚え、世界史に興味を持ち、高校の選択授業で世界史を選択した程です。

量産されるピピンやらカールやらに混乱させられ、成績は散々でしたが。

思春期突入前で心が未熟な時に、ちょっと大人の世界を教えてくれたのが「イブの息子たち」だったという、これ完全に道踏み外すレールに乗りましたよね。

そして、この漫画でホモの洗礼を受けた私はそのまま「エロイカより愛をこめて」へなだれ込み、”エーベルバッハ少佐・命”な、今で言うところの腐女子に成り下がった(?)のでした。
その後、BL好きにもアニオタにもならず、いつの間にか腐女子は解除され、漫画だけは描き続けて現在に至ります。

自分が影響を受けた漫画、今までいろいろ言ってたけど
もしかしたら、いや、もしかしなくても、この「イブの息子たち」が一番影響受けた漫画だったかもしれないです。

*当時このジャンルは「ホモ漫画」といわれており、漫画の中でも使用しているので、ここでもそのまま使わせていただきます。
その辺、無頓着な時代でもありました。

推薦者
今井美保

Imai miho

漫画家。「おくらのあな」で「こみみの小耳もみみのうち」連載中。その他、短編漫画も不定期でアップしてます。

今井美保のページ